岡山市南区と玉野市にまたがる児島湖の水質改善につなげようと、県は貝殻を使った魚礁を沈め、テナガエビを増やす実験を始めた。テナガエビは水が茶色く濁って見える原因の動植物プランクトンを餌とし、体内に有機物を蓄える。しかし、護岸工事などの影響で漁獲量が減っており、実験は「児島湖ブルーの復活」と銘打ち、魚礁を定期的に引き揚げて生息数や体長を調べるなどし、繁殖によって湖の透明度を上げたいとしている。

 1キロ当たり2000〜4000円で取引されるテナガエビ。県環境管理課によると、児島湖ではピークの1981年度にはエビ類の漁獲高が年間約13トンあったが、昨年度は約3トンにまで減った。もともとは湾で、海水と淡水が混じり合う汽水域だったが、農業用水の確保や高潮防止対策などで59年に湾口をせき止め、国内初の人造湖となったことや、護岸工事などですみかがなくなったことが減少の理由とみられる。

 水質の汚染度を示す化学的酸素要求量(COD)は、プランクトンの繁殖に加え、生活排水や工場排水が流入した影響で、20年前の98年度には全国の湖沼でワースト3となる1リットル当たり12ミリ・グラムを記録。下水道の整備や排水規制で改善し、近年は7〜8ミリ・グラム台で推移しているものの、環境基準(1リットル当たり5ミリ・グラム)は達成できておらず、16年度は10番目の悪さだったという。

 そこで県はプランクトンを食べるテナガエビに着目。プランクトンの栄養源になる窒素やリンなどの有機物も体に蓄えるため、魚礁を沈め、産卵などで生息数が増えてから捕獲すれば、有機物を湖の外に持ち出すことになり、さらなる水質の改善につながるという。また、高級食材の漁獲量アップによる児島湖の知名度向上も期待されている。

 魚礁は湖内の3か所に設置。ホタテやカキの貝殻を入れた円柱形のケース(直径15センチ、長さ45センチ)を束ねたものを、1か所に10基ずつ沈めた。

 魚礁は今月中に1度引き揚げた後は3か月ごとに確認し、貝殻の隙間にいるテナガエビの生息数や体長などを計測し、周辺の水質の変化を分析する。実験は3年程度継続させる予定で、分析結果を踏まえて、魚礁の設置場所を変更したり、使用する貝殻の種類を変えたりしていく。

 県の担当者は「手探りの実験だが、県民に児島湖に関心を持ってもらえるきっかけになれば。テナガエビも地産地消できるぐらい取れれば」と期待している。(加藤律郎)

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