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トランプ米政権、大学入学時の少数派優遇を廃止へ
3時間前

トランプ米政権は3日、大学や公立校に入学選考で人種的少数派を優遇する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)のうち、オバマ前政権が導入した指針の廃止に着手した。米各メディアが報じた。

ジェフ・セッションズ司法長官はが同日、オバマ政権の指針24件を撤廃した。その多くが、学校の人種対応やアファーマティブ・アクションの奨励に関連する。
これによりトランプ政権は、大学や高校に対して入学選考時に人種を考慮しないよう求めるとみられる。高校・大学の多様性促進のためにバラク・オバマ前大統領の下で導入された政策が停止されることになる。

米ハーバード大学がアジア系米国人の入学を制限している疑いをめぐる差別訴訟に直面するなかで、今回の措置が明らかになった。

2016年に米最高裁判所はアファーマティブ・アクションを支持する判断を下している。判決文は、先週引退を表明したアンソニー・ケネディ判事が書いた。
ケネディ判事の引退に伴い、ドナルド・トランプ大統領は大学入学選考時の人種配慮についても、政権の考えにより近い判事を指名できる可能性がある。

政策撤廃が意味するのは?

英国ではポジティブ・アクションと呼ばれる、高等教育でのアファーマティブ・アクションは、入学選考時にマイノリティー(人種的少数派)を優遇することで、多様性を促進する狙いの措置。米国内で長らく議論の的になってきた。

ハーバード大学を提訴した非営利団体「Students for Fair Admissions(公正な入学選考を求める学生たち)」は、同大学がアジア系米国人に対して選考の際に不当に高いハードルを課していると訴えている。
ハーバード大学が人種的差別をしている疑いをめぐっては、司法省も調査中だ。

司法省は今年4月、アイビーリーグ(ハーバード大学を含む米東部の名門大学)各大学に対して合格者の選抜方法について公表するよう求めた。
ハーバード大学は、「アジア系米国人を含むいかなる集団の入学希望者も差別していない」と述べている。
同大学ウェブサイトによると、アジア系学生の合格者の割合は現在22.2%となっている。

オバマ政権時に司法省と教育省の連名で出された指針は、「さまざまな生い立ちの学生で構成された学習環境は、それぞれの学生の教育的経験を向上させる」と述べ、多様性の促進を求めた。

「教育機関は、このような豊かな学術的環境を作り出すのを選択することで、学生たちが批判的思考や分析力を高めるのを助ける」
指針は、人口構成に基づいて特定の学校からの入学希望者を優遇したり、選考過程で学生の人種も「他の要素と共に」考慮に入れたりし、多様性を促すことが中心に据えられている。
当時の指針は、アファーマティブ・アクションの抑制を求めたジョージ・W・ブッシュ政権の政策からの転換を示していた。
ブッシュ政権の指針は、オバマ政権時に教育省のウェブサイトから削除されたが、今では復活している。

ベッツィ・デボス教育長官はAP通信に対し、人種や大学の入学選考について議論はしないと語った。同長官は「この問題は司法の場で議論されるものだと考えており、司法も判断を示している」と述べた。
しかし、ピュー研究所が2017年10月に発表した世論調査では、米国人の71%がアファーマティブ・アクションを肯定的に考えている。

米大学のアファーマティブ・アクション

不利な状況におかれている集団は優遇されるべきという考え方のアファーマティブ・アクションが最初に登場したのは、連邦政府の契約企業の雇用について触れた、1961年にジョン・F・ケネディ大統領が署名した大統領令だった。
公民権運動が最高潮に達するなかで、リンドン・ジョンソン大統領は1965年に同様の大統領令に署名。契約企業に対して、従来より多くのマイノリティーを雇用するよう求めたものだった。
各大学は入学選考で同様の指針を採用するようになったが、その後間もなく、激しい議論が交わされるようになり、何十年にもわたって続いている。米最高裁にいくつかの訴訟が上げられている。
最高裁は人種的なクオータ(割り当て)を違憲としたが、大学の入学選考では人種への考慮を認めている。
アファーマティブ・アクションを批判する人々は「逆差別」だと激しく反発しているが、支持する人々は教育や雇用で多様性を確保するために必要な措置だと主張している。
(英語記事 Affirmative action: Trump 'to scrap' college racial bias policy)