https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44707576

タイ洞窟救助、少年たちの心のケアも重要に
2018/07/04

タイ北部の洞窟で行方不明になったサッカーチームの少年たち12人と監督の、9日間にわたる救出劇に世界はくぎ付けになった。

救助隊は現在、どうやって全員を安全に洞窟から連れ出すのか検討している。タイ軍は最長4カ月にわたって少年たちが閉じ込められ続ける可能性があると指摘している。
食料や医療面での対応はすでにされているが、危険な体験が彼らの精神状態に与える影響は大きいのだろうか。

英青少年精神健康サービス(CAMHS)のトラウマ・不安クリニック(ロンドン)で、青少年期の精神科医・コンサルタントを務めるアンドレア・ダニージ博士によると、衝撃的な出来事に直面した多くの子供が短期的には、怖がる、保護者から離れたがらない、神経過敏になる、感情の起伏が激しくなるなどの反応を示すという。

しかし、子供たちにはサッカーチームのメンバーという社会に属しているため、精神面で「守られている」とダニージ博士は指摘する。
米バージニア州リッチモンド大学のドネルソン・フォーサイス教授もそれに同意する。
フォーサイス教授は、「過去の例では、集団は内に向かい、生き延びるため持てるものを総動員する。このような惨事を生き延びられるとしたら、集団が一番いい。それも組織がしっかりした集団がいい」と語った。

責任の擦り付け合いや絶望感、怒りの感情に加えて、潜在的な序列の問題の表面化など、集団内で問題が生じるかもしれないが、チームとして活動してきた過去が少年たちが団結心を維持する助けになるかもしれないと、フォーサイス教授は指摘した。

今しなくてはいけないこと

2010年にはチリの鉱山労働者たちが70日間近く地下に閉じ込められた事例があるが、今回の事例が非常にまれなのは主に少年たちの集団だったことだ。

ダニージ教授は、子供たちが置かれた状況を受け入れる上で大人が果たす非常に重要な役割を強調する。これは一緒に洞窟に閉じ込められた監督から救助隊員、医療チームまで含まれる。
トラウマになる可能性を最小限にするためには、子供たちと「明確で正直な」意思疎通を図ることが不可欠だと、ダニージ教授は話す。
「今後どのようなことが起きるのか情報が与えられているのが重要」だと同教授は指摘する。不確実性は少年たちの精神状態に対する長期的な悪影響を強める可能性があるという。

さらに、子供たちが感情を押し込めないよう、自分の気持ちを話すのを促すべきだという。
自分の家族と話ができるようにするのも、少年たちの士気を高める助けになるが、洞窟では電話回線を敷く作業が進められている。
一方、ダイバーらは少年たちが孤立しないようにしている。

暗闇の中にいる状態はどうか

閉じ込められた状態に耐える上で最も問題になるのが洞窟内の暗さだ。
英オックスフォード大学の睡眠サーカディアン神経科学研究所を率いるラッセル・フォスター教授は、昼夜を認識する光が十分ない状態では、体内時計「サーカディアン・リズム」が「ずれ始める」と語る。
ずれによって睡眠パターンが影響を受けるだけでなく、サーカディアン・リズムが感情や腸の働きをはじめ、体の多くの面に影響を及ぼすとフォスター教授は指摘する。

しかし、救助隊が昼夜を区別できるよう洞窟内に照明を設置するだろうと、フォスター教授は考えている。チリの鉱山労働者にも同様の措置がとられた。
規則的な照明の点灯によって、少年たちが地上に戻ったときに昼夜の感覚を早く取り戻せるのと同時に、困難な状況に置かれたなかで、できるだけ毎日の時間の流れを実感できるようにもなる。ダニージ教授はそれが少年たちに「日常の感覚」を与えてくれると話す。

長期的な影響
(リンク先に続きあり)
(英語記事 Thailand cave rescue: What will the impact be on the boys' mental health?)

https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/C99A/production/_102301615_363c0ae6-7b55-4d09-8e47-30e0289128ee.jpg
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/B0FB/production/_102370354_thai_cave_top_view_640_japanese-nc.png
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/62DB/production/_102370352_thai_cave_rescue_v2_inf640_japanese-nc.png