線虫使ったがん検査 本格的な臨床試験へ 2020年の実用化目指す
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NHK 2018年7月4日 17時02分
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線虫という小さな生物がヒトの尿の臭いからがんを発見する検査方法の研究が進められています。日立製作所とベンチャー企業が共同で本格的な臨床試験に乗り出し、2020年の実用化を目指すと発表しました。

日立と東京のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」は、体長1ミリ程度の生物、線虫を使ってがんを発見する検査方法を、3年前から研究しています。

この検査方法は、犬に匹敵する嗅覚を持つという線虫が、がん患者の尿には近づき、健康な人の尿からは遠ざかる動きをするのを利用し、ステージ0からステージ1という早期がんを発見できる確率をおよそ90%まで高められるのが特徴だとしています。

これまでは顕微鏡を使って線虫の動きを人が1つずつ数えて、がん患者かどうかを判定していたため、検査に時間がかかるのが課題でしたが、今回新たに、線虫の分布を画像で解析して自動で調べる装置を開発し、検査時間を大幅に短縮できるようになったということです。

両社は国内外の17の医療機関や大学と本格的な臨床試験に乗り出し、2020年の実用化を目指すとしています。

ベンチャー企業の広津崇亮代表取締役は「検査費用は数千円のレベルで済む。早期発見できる確率が飛躍的に上がるとみている」と話しています。

●“発見の確立 飛躍的に高まる”

線虫は線形動物とも呼ばれ、土の中や海中に生息するものや人などに寄生するものなど、さまざまな種類が自然界にいます。

がん検査に使う線虫は、シーエレガンスという主に土の中に生息する種類です。

目を持たない代わりに、犬に匹敵する嗅覚で餌を見つけたり天敵を避けたりします。

線虫ががん患者の尿に集まるのは、大腸菌やバクテリアといった線虫が好む餌の臭いと、がん細胞から出る物質の臭いが似ているためと見られています。

ステージ0からステージ1という早期がんの場合、腫瘍マーカーと呼ばれる血液を使ったがんの検査では発見できる確率が10%程度ですが、線虫を使った検査ではおよそ90%まで飛躍的に高まるのが特徴だとしています。

ただ、線虫を使ったがん検査は、顕微鏡を使って担当者が一つ一つ線虫を数えていく作業が必要で、一人当たり一日3件から5件が限界でした。

今回、日立が開発した装置は、光を当てながらカメラで撮影し、その画像を解析して線虫の動きを自動で調べる仕組みで、一日に100件以上の検査が可能になるということです。

装置を開発した日立製作所の久野範人主任研究員は「線虫のがん検査は早期の発見ができそうで、世の中に貢献できるところが非常に大きい。ベンチャー企業と日立の技術を組み合わせれば早期の実用化ができる」と話していました。