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習氏「強国」路線後退=対米悪化で不満拡散か−中国
2018年07月21日14時56分

 【北京時事】中国の習近平国家主席が進めてきた「強国」路線がトーンダウンしている。米国との貿易摩擦の激化が背景にあり、習氏に対する「個人崇拝」の動きも鳴りを潜めつつある。

 習氏は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、異論を許さない姿勢で政権運営に臨んできた。今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では国家主席の任期制限を撤廃。中国の発展ぶりと技術力を宣伝する映画が作られ、毛沢東政治の教訓から共産党が禁じているはずの個人崇拝に似たムードが広がった。

 しかし、トランプ米政権が貿易問題で中国批判を鮮明にすると、「強国」宣伝の勢いは弱まった。民族主義的な論調で知られる共産党機関紙・人民日報系の環球時報は6月下旬、社説で「われわれの(科学技術の)水準は米国と大きな隔たりがあり、この差を克服するには数世代の苦労と努力が必要だ」と訴え、「謙虚」な姿勢を示した。

 折しも好調だった投資や個人消費が減速し、中国経済に不透明感が強まっている。「習氏の強権手法が米国との対立を招いた」(国際政治専門家)という不満が拡散し、習指導部は軌道修正を図っているもようだ。対米関係は、貿易だけでなく中国の主権に関わる南シナ海や台湾問題の要因でも悪化しており、深刻な事態になっている。

 一方、脚光を浴びるようになったのは、習氏に隠れて地味な存在に甘んじてきた党序列2位の李克強首相だ。今月5〜10日、ブルガリアとドイツを訪問。欧州16カ国との首脳会議に出席し、保護主義に反対する認識を各国と共有し、米国をけん制した。

 こうした中、理論面から習氏の権力集中に貢献してきた党序列5位、王滬寧政治局常務委員の失脚説を報じる海外メディアもあるが、真相は不明だ。習氏は予定通り19日から中東とアフリカを訪問しており、「体制が揺らぐような異変は起きていない」(党員)とみられる。ただ、習氏の帰国後、長老も交えて河北省の避暑地・北戴河で開かれる毎夏恒例の非公式会議で、「習一強」体制への批判が高まる可能性がある。