https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180803-00010000-nknatiogeo-sctch
■毒は大丈夫?サンゴ同士はどう連携する?謎が深まる
 海の底に張り付いて花のような姿をしたサンゴは、攻撃的な捕食者とは程遠いイメージがある。
しかし、騙されてはいけない。サンゴの群体を形成するポリプは、小さな口をしていても、見た目よりはるかにどう猛だ。

 イタリアのナポリにあるアントン・ドーン動物学研究所の生物学者トーマス・ヴェガ・フェルナンデス氏もやはり、小さなオレンジ色のサンゴが、
自分の体の何倍もあるオキクラゲ(Pelagia noctiluca)を捕らえて食べているところを初めて目撃して仰天した。

 フェルナンデス氏は、研究仲間のルイージ・ムスコ氏とともに、イタリアのパンテッレリーア島でキサンゴの一種(Astroides calycularis)を観察していたとき、
人間の指先ほどしかないポリプがクラゲの体の一部らしきものを口に入れているのに気づいた。

「すぐにルイージに合図して知らせました」。ふたりは、他のポリプもクラゲの触手を捕らえて満足げに食べているのを目にした。

 シチリア島にあるイタリア学術研究会議沿岸海洋環境研究所の研究部長で、当時サンゴプロジェクトを監督していたファビオ・バダラメンティ氏は、
フェルナンデス氏から報告を受け、自らも調査のため潜ってみると、やはり同じ現象に遭遇した。

 1匹のクラゲを追いかけていたところ、それはあっという間に「サンゴの口の壁」に捕らえられてしまったという。
「クラゲはもがいて逃げようとしましたが、まったく無駄な抵抗でした」

 研究チームは数年間調査を続け、全部で20匹のオキクラゲがサンゴに食べられる様子を観察した。
そして、その結果を7月30日付で科学誌「Ecology」に発表した。

■協力してクラゲを捕らえるサンゴ
 サンゴとクラゲは、実は近い関係にある。どちらも、刺胞と呼ばれる針を触手に持つ刺胞動物の仲間である。

 海底に張り付いたままの刺胞動物が、移動できる刺胞動物を捕食する様子が観察されたのは、今回が初めてではない。
紅海ではナミトゲクサビライシがミズクラゲを、インドネシアではイソギンチャクが泳ぐクラゲ数種を捕食する現場が目撃されている。

 どちらのサンゴも、大型の獲物をのみ込めるだけの大きな口を持っていたが、今回報告されたキサンゴのポリプは、大きさが1センチほどしかない。
オキクラゲの傘だけでも、サンゴの群体全体と同じほどの大きさがある。
その巨大な動くクラゲを、小さなポリプは集団で協力するという驚きの方法で捕食していた。

 運悪くすぐそばを通りかかったクラゲの傘を、まず数匹のポリプが小さな触手で捕らえる。
すると、別のポリプが素早くクラゲの大きな腕を捕らえて先端を口に入れ、逃げられないようにする。
それからさらに多くのポリプが、またときには別の群体も加わってクラゲの他の部分を捕らえ、ゆっくりとその体を引き裂いていく。

 専門家は、複数のサンゴの群体が協力して獲物を捕らえるという点にとりわけ感心した。オランダ、ナチュラリス生物多様性センターの上級科学研究員
バート・ホークシマ氏は、「ポリプ同士が連携している様子には驚かされました」と話す。同氏はこの研究には参加していない。
群体が互いにコミュニケーションを取り合っているのか、それとも何の合図もなしに連携が起こるのかはわかっていない。

■エサをめぐる攻防
 また、クラゲの出す強力な毒にサンゴがどう対応しているのかも謎である。この種のクラゲは、人間にはかなり危険と考えられている。
サンゴにはクラゲの毒に対する免疫があるのか、または何か毒に抵抗する手段を持っているのだろうか。
バダラメンティ氏が言えるのは、食事中のサンゴは「とてもうれしそうに見えました」ということだけだ。

 論文の共著者で英スコットランドのエジンバラ大学教授J・マーレー・ロバーツ氏は、小さなサンゴが大きな生物を捕食できるという考えは
「これまでの常識を覆すもの」と話す。
「サンゴの採餌法について、これまで知られていたことを見直し、サンゴのポリプがいかに協力して大きな獲物を捕らえることができるか考えるきっかけになりました」

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