https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45054635

韓国で流行する盗撮ポルノ、高まる懸念と進まない対策
2018/08/06 9時間前

ローラ・ビッカー BBCニュース(ソウル)

初めて韓国の盗撮カメラについて聞いた時のことを覚えている。

ソウルに到着して間もない頃だ。友人とサイクリングをしていて、私は漢江沿いの公衆トイレに走っていった。

私が走ってトイレに入ろうとすると、「カメラが中にないかどうか確認して」と友人が叫んだ。私は振り返って笑った。でも、友人は冗談を言ったのではなかった。

たくさんの女性が、韓国で公衆トイレに入るときに最初にすることは、のぞき穴や隠しカメラがないか確認することだと語った。万が一の用心だ。
この国が、盗撮ポルノ流行と呼ばれる現象の真っただ中にあるからだ。

隠しカメラは女性の、そして時には男性の脱衣の様子、トイレに行く様子、もしくは衣料品店やジム、水泳プールの更衣室までも記録する。動画はインターネット上の期間限定ポルノ動画サイトに投稿される。

ソウルの活動家は今、盗撮を防ぐ対策をもっと取らないと、この種の犯罪が他国にも拡散する可能性が高く、止めるのが難しくなってしまうと警鐘を鳴らしている。
いわゆる盗撮ポルノが毎年6000件以上警察に通報されており、被害者の80%は女性だ。

被害を申告しない人がさらに数百人いるとの懸念もある。被害者の何人かは、友人だと思っていた男性から盗撮されている。
BBCは一人の女性に体験を聞いた。仮に彼女を「キムさん」と呼ぼう。キムさんはレストランで、テーブルの下から盗撮された。男性は小さなカメラで金さんのスカートの中を盗撮した。

キムさんはそれに気付いた携帯電話を取り上げた。そこにはキムさんを映した他の動画もあり、男性たちの間で会話のネタになっていた。

「チャットルームを最初に見た時、本当に衝撃を受けた。頭が真っ白になって、私は泣き始めた」とキムさんは話した。キムさんは警察に行ったが、被害の説明はキムさんをさらに傷付けた。

「他の人はどう思うだろう? 警察官は私の服を露出しすぎと思うだろうか? それが私を安っぽく見せると? 私は考え続けた」
「警察署では孤独を感じた。全ての男性が私を肉のひと切れか性的な物体として見ているかのように感じた。怖くなった」
「誰にも言わなかった。責められるのが怖かった。家族や友人、周囲の人たちが、あの男性たちのように私を見るのではと恐れた」

男性が罰されることはなかった。

韓国に留まらない問題

韓国は世界で最も技術が発展し、デジタルで繋がっている国のひとつだ。スマートフォンの所持率では世界をリードしている。成人の90%近くがスマートフォンを1台持ち、93%がインターネットを利用可能だ。
しかしその非常な発展こそが、犯罪を発見し犯罪者を捕まえるのをとても難しくしている。

パク・スヨンさんは2015年、ハ・イェナという名前で、支援団体「デジタル性犯罪アウト(DSO)」を立ち上げた。 「Soranet」という最も悪名高いウェブサイトの1つの閉鎖を求める運動の一環だ。
Soranetは100万人以上の利用者を持ち、登場する女性に説明したり同意を得たりしないまま、数千件もの動画を撮影し、共有していた。同サイトの盗撮動画の多くは、トイレや店の更衣室で隠し撮りされたり、過去の恋人が報復のために投稿したりしたものだった。

動画に映っていた女性の何人かは、自ら命を絶った。

「動画の公開を停止させることは可能だが、本当の問題は何度も何度も動画が上がってくることだ」とパクさんは言う。
「流通が大きな課題だ。共有元のウェブサイトは、投稿された動画が違法に撮影されたものだと知らなかったと抗弁する。本当に? どうすれば知らないままでいられるのだろう?」
パクさんは流通者に的を絞りたいと望んでおり、そのためには国際的な取り組みが必要だと考えている。
(リンク先に続きあり)

(英語記事 South Korea's spy cam porn epidemic)

この写真のような行為よりも、隠しカメラは発見が非常に難しい(写真はモデルによる再現)
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/549B/production/_102795612_gettyimages-694128204.jpg
多くの韓国女性が、公衆トイレを使う際にはカメラがないか確認するのを習慣にしている
https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/10FB7/production/_102795596_gettyimages-170614774.jpg