長野県内でツキノワグマの目撃情報が急増している。食料となるブナやコナラなどの木の実が凶作で、山を下りてきているとみられる。5日には木曽町で83歳の男性が子グマを連れた成獣のクマに襲われ、頭や顔に重傷を負った。県はクマの通り道となりそうな林の木を伐採し、人の生活圏に近づけないようにするなど警戒を強めている。

 県鳥獣対策・ジビエ振興室によると、4〜6月の目撃件数は計296件で、過去最多だった2006年度を上回るハイペースとなっている。県内では06年度は3362件、10年度は1591件、14年度に1575件と、4年ごとにクマが大量出没。今年度もその可能性が指摘されていた。

 雄グマは自分の子孫を残そうと雌が連れている子グマを襲う習性がある。餌が比較的とりやすく、人が立ち入ることの少ない山奥に生息するとされ、子連れの雌グマは雄グマを避ける傾向があるという。

 クマは9月以降、冬眠に備えて主な餌となるドングリを食べ脂肪を蓄積するが、山に十分な食料がない場合は、人里に下りてくる可能性がある。NPO法人「信州ツキノワグマ研究会」の浜口あかり理事(34)は「クマは臆病な性格。草を刈り、生ゴミをきちんと処理するなど、人間がいることをアピールすることが大切」と話す。

 クマは川沿いに山から人里に下りてきているとみられることから、県は市町村と協力して河川周辺の「河畔林」に生い茂った木を伐採。見通しをよくすることで、クマの行動を制限する対策を取っている。

 県鳥獣対策・ジビエ振興室は「目撃情報が多い年は人的被害も多い。あくまでデータ上の予測だが警戒してほしい」とする。千曲市では看板を設置し、飯山市では目撃情報が相次いだ6月に広報車で市内を巡回して、田畑や山村に行く時はラジオや鈴を携帯するよう注意喚起。6日にクマによる負傷者が出た栄村でも住民に警戒を呼びかけている。

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2018年08月08日 09時21分
YOMIURI ONLINE
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