亀の甲より「年の功」?

生涯未婚率の男女差を解消するための二つ目の方法は、「再婚男性と初婚女性」に見られる偏りを是正する、というものである。
特に再婚男性に強く見られる「若い女性への願望」を見直さなければならない、と思う。

前述したが、「再婚女性・初婚男性」カップルの夫のうち、44%が年上の妻を選んでいる。
それに対して、「再婚男性・初婚女性」カップルの夫は実に80%が年下の妻を選んでいるのだ。
年上の女性と結ばれたケースはわずか12%で(残りは同い年)、
「初婚同士」「再婚女性・初婚男性」「再婚同士」を含めた四つの「結婚パターン」のうち、「年上女性」を選ぶ比率が最も少ない。

15年の日本の全ての結婚のうち、女性が年下である割合は58%であることを考えると、再婚男性の「年下志向」が際立つ。
しかも、全ての結婚の年齢差の平均は男性が2.2歳年上だが、「再婚男性・初婚女性」のカップルでは男性が6.6歳年上だ。

「再婚男性と初婚女性」のカップルに占める、男性が7歳以上年上という結婚は44%(全体平均では16%)を占める。
「若い妻を……」と考える再婚希望の男性が、若い初婚女性に狙いを絞って「結婚市場」へ参入するケースも少なくない。

初婚同士の結婚であれば、女性はむしろ自分の年齢に近い男性の方がいいと考えるようだ。
初婚の男女同士のカップルの年齢差は1.7歳と2歳を切っており、結婚の4パターンの中で年齢差が一番小さい。

これが、男性側のみ再婚となると、初婚女性が相手の男性に求めるのは、社会や家庭での経験、つまり「年の功」の魅力なのかもしれない。

「若い女性」にこだわらず……

統計を読み解くと、結婚歴のない男性が結婚歴のない女性との結婚を望むなら(女性が結婚したい場合も同じく)、「自分と年齢の近い相手を狙う」ことが成功のコツといえそうだ。
もし、未婚の若い人と結婚したいなら、男女ともに「自らが若いうちに積極的に動く」べし、ということになる

世の中では、女性の「結婚適齢期」がよく話題になる。しかし、統計的には結婚願望を持ちながらも、結婚歴のないまま年を取る男性の方がかなり多いことになる。
実は男性こそ、早く婚活を始めるべきかもしれない。そして、これは男女ともだが、初婚の段階では、自分とほぼ同じ年齢の相手との結婚が「有力な選択肢」となることも意識したい。
こういった選択肢の変化が「社会の歪み」の是正につながる可能性はあるかもしれない。


■天野 馨南子( あまの・かなこ )
 ニッセイ基礎研究所生活研究部研究員。東京大学経済学部卒。1995年、日本生命保険相互会社入社
99年からニッセイ基礎研究所に出向。専門分野は少子化対策・女性活躍推進。
くらしに必要な「正確な知識」を広めるための執筆・講演活動の傍ら、内閣府少子化対策関連有識者委員、地方自治体・法人会等の少子化対策・結婚支援データ活用アドバイザー等を務める