埼玉県熊谷市で2015年9月、小学生姉妹ら6人が殺害された事件で、県警が事件発生など必要な情報を周辺住民に提供することを怠ったため、被害を防ぐ手段を取れずに妻と娘2人を殺害されたとして、遺族の男性(45)が県を相手取り、約6400万円の支払いを求めて国家賠償請求訴訟を14日にさいたま地裁に起こすことが、12日までに分かった。男性側は警察権の不行使の違法性を主張し、「落ち度があったことを認めて謝罪してほしい」と求めている。

<熊谷6人殺害>死刑判決に自然と涙 妻子奪われた男性が胸の内、謝罪なく「怒りと憎しみしかない」
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 事件は15年9月14〜16日に発生。前日の13日、熊谷市内で住居侵入事案を起こしたとして、任意同行されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(33)=強盗殺人罪などで死刑判決、東京高裁に控訴=が熊谷署から逃走。直後に付近の住宅2軒で住居侵入事案が相次いだ。14日に市内の住宅で、田崎稔さん(55)と妻美佐枝さん(53)が殺害される事件が発生。16日までに、白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)と長女で小学5年の美咲さん(10)、次女で小学2年の春花さん(7)=年齢はいずれも当時=が殺害され、遺体で発見された。

 事件で妻と娘2人を殺害された男性側は、少なくとも田崎さん夫婦の遺体が発見された14日の時点で、殺人事件が発生したこと▽任意同行された外国人の男が署から逃走中であること▽男が住居侵入事案を起こしたこと―などを住民に周知するべきだったと主張。防災無線を活用したり、パトカーの巡回やアナウンスによる注意喚起を怠ったのは、警察権の不行使で違法と訴えている。

 男性は埼玉新聞の取材に対し、「警察が周知していれば戸締まりをしたり、子どもを外に出さないなどの対策が取れた。落ち度があったことを認めて謝罪してほしい」と話している。

 県警は事件後、一連の対応を検証する報告書を公表。住民に注意喚起しなかったことについて、「住居侵入事件は、後に殺人事件に至ると想定できるほど具体的な危険行為を伴うものではなかった」「地域社会の不安感をいたずらに高める恐れが懸念された」などとした。県警や市は事件を受けて、不審者や犯罪情報を防災無線などで提供する「熊谷モデル」を構築。仕組みは県内全域に広がった。

■熊谷6人殺害事件

 2015年9月14〜16日、熊谷市内の住宅3軒で小学生姉妹ら6人が相次いで殺害される事件が発生。被害者宅で身柄を確保されたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(33)が殺人などの容疑で逮捕された。ナカダ被告は前日の13日、任意同行先の熊谷署から逃走。その後付近で外国人による住居侵入事案の通報が相次いだが、県警から住民への積極的な情報提供はなかった。強盗殺人などの罪で起訴されたナカダ被告の裁判員裁判は今年1〜3月、さいたま地裁で開かれ、刑事責任能力が争点になった。地裁は完全責任能力を認め、死刑を言い渡した。弁護側は判決を不服として即日控訴した。

9/13(木) 4:24
埼玉新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180913-00010003-saitama-l11