全国最高の気温を観測することがないまま、「日本一暑いまち」をうたってきた群馬県館林市の夏が終わりそうだ。6月に市内の地域気象観測システム(アメダス)が移設され、観測環境が変わったことが影響したとみられる。イベントのスローガンから「暑い」を外す動きもあるが、猛暑日が続いたのは事実。市は「気温の数値に関係なく、来夏も熱中症対策に力を入れていく」としている。

 館林のアメダスは、市中心部の館林消防署の一角にあったが、2019年度中の消防署移転に伴い、アメダスも今年6月、西に約2キロ離れた県立館林高校のグラウンドに移った。道路と駐車場のアスファルトに囲まれていた環境から、周辺に田畑が広がる風通しのよい場所に変わった。

 気象庁が7月から公表している新旧観測地点のデータを比べると、移設後の最高気温は移設前よりも最大1・4度低く、平均でも0・5度の差がある。これが影響したためか、昨年4〜9月は11日間あった「最高気温日本一」は今夏ゼロだ。

 同庁観測課の担当者は、「観測地はいずれも基準を満たしている。住宅街と田畑が広がる郊外とでは環境が異なり、1度程度の差が出ることは珍しくない」とし、観測記録の連続性に問題はないとの見解だ。

 「日本一暑い」とは言いにくくなった館林。「小さなお店の集客にもつながっていただけに、残念」と話すのは館林商工会議所商業観光課の鹿沼義一課長だ。

 同商議所では13年から「日本一HOTなまちを激辛料理などで乗り切ろう」とのスローガンでグルメ総選挙を毎年続け、1000票以上が集まる名物イベントに育ててきた。観測記録が「日本一」でなくなったことから、来年からは「暑い」以外のスローガンで続けようと検討している。

 とはいえ、今年も7月には12日間連続の猛暑日を記録し、これまでの熱中症搬送者数が過去最多の100人に達するなど、順位に関係なく暑さは証明されている。

 市は08年、暑さ対策に取り組む「地球環境課」を設け、一人暮らしの高齢者らに熱中症予防を呼びかけるなどしてきた。以前は「日本一」の話題が取り上げられることで、市民向けの注意喚起ができていた面があったが、今後は自前の広報活動が重要になる。市は「これまで以上に積極的に注意を呼びかけたい」と対策の周知に力を入れる構えだ。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20180920-OYT1T50021.html