生活保護受給者が地震や豪雨で被災した上、保護費を打ち切られる事例が相次いでいる。義援金を収入とみなされたり、親族宅に避難したことで「支援者がいる」と判断されたりするのが主な理由だが、中には困窮した暮らしに逆戻りする人もいる。支給の可否を判断する自治体は、被災者の事情に十分配慮した対応が求められる。

「義援金はだんだん減っていく。毎月入る保護費がないと、やっぱり不安」

2016年4月の熊本地震で被災した熊本県の女性(83)は悩む。生活保護を受給していたが、義援金と被災者生活再建支援金を収入とみなされ打ち切られた。年金収入はなく、義援金を取り崩して暮らす。
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■夫は十数年前に死去、保護費が頼り

住んでいた賃貸住宅は壊れ、避難所や別の賃貸住宅を転々とした。夫は十数年前に死去し、1人暮らし。交通事故の後遺症で足が自由に動かない。月に6万円台の保護費が頼りだった。

生活保護制度は、被災した受給者が義援金などを受け取っても、自立更生に使う分は収入とみなさない考え方を示す。生活再建費用を自治体に申告して認められれば、その分は収入から除かれる仕組み。仮に余った分が半年以上の最低生活費を超えていれば、保護費支給は廃止される。
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ただ、受給者や支援団体は、自立更生に認められる金額は少なく、義援金などの大半を収入とみなされて保護が廃止されていると主張する。出費を自立更生費として認めてもらうには、購入前に店で見積書を受け取り、自治体に提出する手間もある。複雑な手続きを嫌って申請せず、義援金などのほぼ全額を収入認定される人もいるという。
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女性は地震で家財道具を失った。障害者用の靴を生活再建費として自治体に届けたが、「ぜいたく品」と言われた。「足を引きずるから普通の靴はすぐ傷んでしまう。ぜいたくかね」
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■保護費打ち切り、東日本大震災でも

被災者の暮らしを立て直す義援金などが、逆に保護費打ち切りの要因となる事態は、11年3月の東日本大震災でも明らかになった。
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日本弁護士連合会が同年8〜10月、被災5県(青森、岩手、宮城、福島、茨城)で実施した調査では、義援金や補償金を収入とみなされて生活保護を廃止・停止されたケースが458件に上る結果が出た。

■「国の通知と自治体の対応の差が大きい」

国は同年5月、自立更生に充てる分を収入とみなさない考え方とともに、家の修理や家財道具の購入など生活再建にかかる出費を広く解釈するよう自治体に通知していた。しかし事務を担う自治体への周知が十分でなく、柔軟な運用ができなかったことが浮かび上がった。
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同様の通知は、後の熊本地震でも行われた。熊本地震で被災し、義援金を受給したことで保護費を打ち切られた熊本県の男性(62)は「受給者のギャンブルが問題になり、自治体も支給に慎重になっていると感じる。でも被災した受給者が元の生活に戻るためには、少しは蓄えもいる。国の通知と自治体の対応の差が大きい」と訴える。
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■避難で住まいを転々…保護打ち切りの例も

避難で住まいを転々とするうち、保護費を打ち切られた例もある。昨年7月の九州豪雨で被災した福岡県朝倉市の男性(65)だ。
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男性は1人暮らしの自宅が壊れ、同じ市内の妻と娘宅に身を寄せた。約1カ月同居し、その後は1人で避難所へ。昨年末から仮設住宅に単身で暮らしてきた。
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保護費は、妻と娘宅に避難したことで世帯が同一となり、支援を受けられると判断されて豪雨直後に廃止された。義援金や支援金は今年6月に底を突き、一時は妻や支援団体から届く食材だけで日々をつないだ。
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生活保護は支給を世帯単位で判定し、世帯全体の収入が最低生活費を下回ると対象になる。ただ国は09年、失業などで家を失った人が一時的に知人宅に身を寄せても、一律に同一世帯としないよう通知している。受給者と別居家族の世帯が同一かどうかは平常時も争いになることが多い。避難で住居を転々とする災害時は判断がより難しくなる。
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男性は市から、家族と同一世帯として保護を再申請するよう言われた。家族と折り合いが付かずに迷ううち、生活費が足りず一時体調を崩してしまった。
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■「再建と自立、両方の視点で」

以下全文はソース先で

9/27(木) 10:24
西日本新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180927-00010000-nishinpc-soci&;p=1