福井県敦賀市本町1丁目と福井市有楽町にそれぞれある暴力団正木組と宮原組の事務所に使用禁止の仮処分決定が出て10月20日で丸1年がたった。定例会の開催や構成員の立ち入りが仮処分で禁じられ、事務所として出入りする組員はいなくなった。両暴力団から不服申し立ては出ておらず、事務所での活動は沈静化している。双方の事務所付近の住民は、昼夜を問わぬ警察官やパトカーの巡回を心強く感じているが、仮処分決定後に正木組組員による強盗致傷事件が起きており、「まだ不安はある。いなくなってほしい」との声も上がっている。

【写真】宮原組の事務所

 正木組は指定暴力団神戸山口組の2次団体、宮原組は指定暴力団山口組の3次団体。山口組と神戸山口組は対立抗争状態で、2016年2月には正木組事務所に銃弾が撃ち込まれ、発砲を指示したとして宮原組組長=懲役7年で服役中=が逮捕された。平穏に暮らせる人格権が侵害されているとして昨年、付近住民の委託を受けた福井県暴力追放センターが代理訴訟制度を使い、仮処分を申し立てた。

 両事務所は▽定例会や儀式を行う▽構成員を立ち入らせる▽連絡員を常駐する▽外壁に紋章や表札を設置する−ことが禁止された。不服申し立てや、通常の訴訟(本案訴訟)で決定が覆らない限り、使用禁止は続く。

 県警は現在も24時間体制で警戒している。組織犯罪対策課によると、以前は月1回ほどの定例会や、新組員が加入する際の儀式が行われていたが、仮処分の決定以降はない。同課は「事務所は本来、暴力団の活動拠点。使用禁止になりダメージは大きいのではないか」とみている。

 宮原組では「六代目宮原組本部」と書かれていた表札は、組長の名字に変わった。組長は今年3月、銃撃事件の実刑判決が確定し服役している。近くに住む40代男性は「最近あまり組員を見かけなくなった。(仮処分は)安心と言えば安心。このままいなくなってほしい」と話した。

 一方、正木組周辺では今年2月、みかじめ料の支払いを断った飲食店経営者に正木組組員が暴行し、現金を奪ったとされる強盗致傷事件が発生。11月に福井地裁の裁判員裁判で審理されるが、近くの60代男性は「暴力団の組織維持のために住民がトラブルに巻き込まれることがあっては困る」と憤る。40代主婦は「事務所の建物があること自体が怖い。本当に活動していないか不安」と話した。

 県暴力追放センターの代理人弁護団の井上毅事務局長は「引き続き、決定に違反していないか監視していく。違反が確認された場合は、違反日数などに応じて一定額の金銭の支払いを命じる『間接強制』の申し立てを視野に入れていく」としている。

 弁護団によると、暴追センターによる事務所使用禁止の裁判所への申し立ては、福井の2件を含めてこれまで8府県で11件(うち仮処分8件)あり、いずれも事務所として使用できなくなっている。



yahooニュース(福井新聞) 10/21(日) 12:20配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181021-00010001-fukui-l18