【ワシントン=黒瀬悦成】北米大陸を管轄する米北方軍のオショーネシー司令官は29日、ワシントンで記者会見し、中米諸国から米国に向けて北上を続ける不法移民集団に対処するため、米軍約5200人をメキシコとの国境地帯に派遣すると発表した。トランプ政権による軍部隊の派遣は、11月6日の中間選挙をにらみ、重要争点である移民対策で厳然とした姿勢を打ち出し、有権者の取り込みを図る狙いがある。

 派遣されるのは米陸軍の工兵や航空、医療部隊などで、国境警備当局関係者の輸送などの支援任務に就く。米メディアは軍の派遣規模について、約800〜千人と伝えていた。国境地帯には既に2千人規模の州兵部隊が展開している。

 トランプ大統領は29日、ツイッターで「移民集団に多数のギャングや極悪人が紛れ込んでいる。わが国への侵略だ。軍が待ち構えているぞ」と警告した。

 米政府高官によると、移民集団は約3500人で、現在の位置はメキシコ南部とされ、数週間後に米国国境に到達する見通し。

 トランプ政権が中間選挙1週間前のタイミングで米軍を派遣した背景について、テキサス大エルパソ校のリチャード・ピニェダ准教授は「移民問題は、国境地帯の住民にとって経済と治安の両面で脅威だ。軍は派遣は、治安問題に関心の高い共和党の白人穏健派層に訴えかけ、選挙戦を有利に持ち込む狙いがある」と指摘する。

 メキシコと国境を接する各州のうち、テキサス州とアリゾナ州の上院選とニューメキシコ州の下院選(第2選挙区)はいずれも接戦となっており、予断を許さない情勢だ。

2018.10.30 07:56
産経ニュース
https://www.sankei.com/world/news/181030/wor1810300013-n1.html