ドナルド・キーン 日本文学研究家 
 ・神道によりますと、人間が生きているこの世界は、いちばんいいところです。死んでからは、黄泉という穢らしい汚れの多いところへ全ての人は行く。
仏教では、この世の中は娑婆であって、穢れのおおいところである、死んでから清い浄土へ行く。儒教のほうは、この世の中以外に世の中はない。
三つともまったく矛盾しあっているんです。日本人はその三つの宗教を同時に信じられるので、たいしたものだと思います。
・日本の開国維新は、文明の改宗といわれるほどの東洋文明の否定であり、放棄だった。もちろん東亜世界の伝統的な中華天朝朝貢冊封秩序の否定でもあった。

 ・日本人の鋭い感覚は、近代化を「文明開化」として捉えた。そしてその時代感覚から「脱亜入欧」を進め、積極的に西欧文明を受容して国家を転生、成長、隆盛させるとともに、怒涛のごとくアジアに影響力を伸長していった。