■「新雪・凍結に有効」JAF

 国土交通省が今冬から、大雪の際に「立ち往生」が懸念される高速道路や国道でタイヤチェーンの装着を義務化することについて、県内のドライバーからは「スタッドレスタイヤで十分」「チェーンなんて使ったことがない…」という戸惑いの声が上がった。これに対し、国交省は立ち往生対策としてチェーンの必要性を強調。義務化に伴って品薄になることも予想されるため、県内のカー用品店は在庫の確保を急いでいる。

 国交省は、昨冬の大雪で大規模な立ち往生が相次いだことを踏まえ、チェーン装着を義務付ける区間を指定することにした。対象区間は、今冬に全国に約20カ所設け、来年度以降は200カ所に拡大するという。罰則もある。

 国交省道路局企画課の担当者は「どこを指定するかは道路管理者や警察と共に検討中」とした上で、「これまでスタッドレスタイヤの車も立ち往生した。スタッドレスだけでは対策として不十分。チェーンも必要だ」と説明する。

 雪国の富山ではスタッドレスを使用するため、多くのドライバーはチェーンを使った経験に乏しい。富山市の建設業の30代男性は「スタッドレスタイヤで十分ではないか。義務化は大型車だけでいい」と言う。立山町の伊藤景子さん(42)は「チェーンなんて一度も付けたことがない。自分で取り付ける自信はないし、どうしよう」と不安げ。小矢部市の砂土居真祐美さん(34)も、チェーンを使ったことはないといい、「小さい子どもがいるので、取り付け作業が大変そう」とこぼした。

 こうしたドライバーの心配の声に対し、JAF(日本自動車連盟)富山支部の林宏二さん(49)は、「スタッドレスは圧雪に強い。チェーンは、立ち往生の原因ともなる新雪や凍結に強く、対策として有効」と指摘。首都圏などでは、チェーン装着のための出動もあるとし、「購入して車に積んでおくだけでなく、雪が降る前に、実際に取り付け作業を経験しておくことが大切」とアドバイスした。

 国交省が義務化の方針を示した15日から一夜明け、県内のカー用品店には早速、チェーンに関する問い合わせが入った。

 スーパーオートバックス富山南(富山市婦中町塚原)は、義務化に伴い、チェーンの在庫を増やすという。竹内真志店長代行は「県内ではチェーンの需要がほとんどなかった。今冬は購入する人が増えるだろう。売り場も目立つよう工夫したい」とする。価格が2万円台のゴム製チェーンがお薦めといい、「首都圏で雪が降れば、チェーンは一気に品薄になる。購入するなら早めがいい」と話した。

 トラックやバス事業者からも、戸惑いの声が漏れた。トナミ運輸(高岡市昭和町)の担当者は「自分たちが対策を講じても、別の車両が立ち往生すれば結局、巻き込まれてしまう。全ての車両がきちんとチェーンを付けるようにできるかが課題となる」とみる。

 富山地方鉄道(富山市桜町)のバス事業の担当者は「チェーンの着脱スペースが混み合うことになりはしないか。課題が多そう」と語った。



北日本新聞 2018年11月17日 05:00
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