7月、独ベルリンで行われた記者会見で話す中国の李克強首相(ブルームバーグ)
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 巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として東欧への進出に力を入れる中国だが、東欧諸国側には投資の約束が実現しないことや投資の条件に対する不満があり、中国の思惑通りとはいかないようだ。

 中国は東欧への地歩を固める手段として「16プラス1」と呼ばれる枠組みを構築した。この枠組みを構成する欧州連合(EU)加盟11カ国とバルカン5カ国は、中国を交えて毎年開催されるフォーラムを、自国経済の活性化につながるインフラ整備に中国の投資を誘致するチャンスとみていた。

■投資でなく融資

 しかし、参加国の多くは中国からの投資が実現しないことに幻滅している。そして中国政府が現金提供ではなく融資を好むことにも不満を感じており、欧州復興開発銀行などEU内の枠組みの方が有利な取引ができることに気づいている。

 中国の支援で実現したプロジェクトの中には、不名誉な形で関心を集めたものもある。モンテネグロの高速道路開発プロジェクトは費用が膨れ上がり、センター・フォー・グローバル・ディベロップメント(ワシントン)はモンテネグロに「過剰債務の特別なリスクがある」と指摘した。ハンガリーのブダペストとセルビアのベオグラードを結ぶ高速鉄道計画には、入札に関連して欧州委員会の調査が入った。

 メルカトル中国問題研究所(MERICS)欧州担当責任者のヤン・バンデンフェルト氏(ベルリン在勤)は、「このところ、この枠組み全体に対する一種の不安感が膨らんできている」と指摘した。

 16プラス1の国々は各プロジェクトに付随する条件がアフリカ諸国に提示されている条件と同じだと認識しており、バンデンフェルト氏によると屈辱的な条件だと考えている国もある。「中国が思っているほど、魅力的な契約ではない」と同氏は指摘した。

 エアステ・グループは5月のリポートで、中国と中東欧諸国の貿易投資関係は過去10年で発展したものの、いくつかの国では「宣言した数字に届かず、期待を満たさなかった」と指摘した。

 16プラス1については、2012年の立ち上げ時から賛否両論があった。16プラス1の年次フォーラムでは各国首脳によるサミットが行われ、中国首相との二国間会談の機会も設けられる。しかしEUの当局者らは当初から、これが中国とEUとの結びつきを深めるためというよりも、むしろ貧しい東欧諸国をEUから切り離すための試みなのではないかと懸念してきた。17年12月に欧州外交評議会が作成したEU・中国間関係に関するリポートは、「16プラス1が『分割統治』の手法の一部であることに疑いはない」と結論づけている。

■独が批判強める

 EUおよびドイツやフランスなどは、EU域内の重要なインフラや企業に対する中国からの投資の審査を厳格化する取り組みを推進している。16プラス1のフォーラムをめぐってトラブルが起きていることは、彼らにとっては歓迎すべきことかもしれない。特にドイツは16プラス1に対する批判の声を徐々に強めてきた。

 ドイツのある政府高官によると、東欧諸国が中国との経済的な結びつきを追求することは構わないが、EUの共同方針を犠牲にすることは認めないというのがドイツの立場だ。この高官は、中国が投資の見返りに政治的便宜を求めるという「見えないリスク」の存在を指摘した。

 ポーランドのモラウィエツキ首相は、今年ブルガリアの首都ソフィアで行われた16プラス1の会合に出席せず、代わりに副首相が出席した。この件に詳しい関係者2人によると、同枠組みの参加国の中で懐疑論を主導してきたのがポーランドだ。

 欧州外交評議会ワルシャワ支局の責任者を務めるピョートル・ブラス氏は、「期待のミスマッチがあった」と述べる。ポーランド側が未開拓地の開発に関する直接投資と関与を中国に期待したのに対し、中国側が関心を持っていたのは公共インフラ事業に関する契約、優遇された条件、ハイテク企業の買収だったという。

 とはいえ、欧州側のある政府高官によると、さまざまな失望感はあるにせよ16プラス1の枠組みが破棄される可能性は低い。各国は依然として中国首相と年に一度会う機会が保証されることに価値を見いだしている。また同枠組みを通して、中国で投資が活発な分野からの注目度が上がることも分かっている。このことは、東欧の小規模な国にとって特に重要な恩恵だという。

(続きはソース)

SankeiBiz 2018.11.24 07:00
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