外国人受け入れ スピード重視
政府、4月導入へ制度案 迫る選挙「最後の機会」
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 菅氏は17年冬に介護施設のベッドが職員の不足によって空いている現状を知り、危機感を強めた。安倍晋三首相に
外国人の受け入れにカジを切るべきだと提案。移民政策はとらないとの条件付きで首相は容認し、18年2月の経済財政
諮問会議で検討を表明した。
 この時点で首相官邸の念頭にあったのは、19年の政治日程だった。外国人の受け入れ拡大は、支持基盤の一つである
保守派の反発が予想された。安倍政権は12年の発足以来、「移民政策はとらない」と説明しながら、技能実習制度など
を活用する形で国内の労働力不足を外国人に頼ってきた。
 19年春は統一地方選、夏に参院選がある。一方で法案の提出時期を19年秋の臨時国会以降に先送りすると、夏の
参院選次第で法案成立が難しくなる読みがあった。
 同時にすべての都道府県で有効求人倍率が1倍を超える足元の経済状況があった。首相が誇ってきた有効求人倍率は、
アベノミクスの成果といったアピール材料だけにとどまらなくなった。自民党には人手不足の解消を求める陳情が飛躍的に
増えていた。
 こうした経済状況や今後の政治日程を踏まえ、政権が早々と固めたのは19年4月という導入時期だった。拙速との批判が
出るのも承知のうえで、まず制度を始めなければ対応できなくなる。「安倍政権でできなかったら次の政権ではできない。
最後の機会だった」。政権幹部はこう指摘する。
 課題は残る。政府は19年度から5年間で約34万人を上限に受け入れると説明している。想定を上回って外国人労働者が
来た場合の対応や、都市部に外国人が集中したらどうするのか。月内に決める基本方針は具体的な対応策は乏しく、
運用面での対応が重要になる。
 各業種を担当する省庁は人手不足の状況を継続的に把握する。状況に変化があれば関係閣僚会議を開き、新たに日本
に来る外国人の在留資格認定証明書の交付を止める。有効求人倍率など客観的な経済指標で判断するが、業界団体の
反対を押し切って受け入れ数を減らせるかは不透明だ。
 もう一つの懸念が外国人が働く地域だ。基本方針には大都市に集中しないよう措置をとるとの規定が明記されたが、
現時点で実効性は見えない。地方の最低賃金は東京や大阪などに比べると低い。地方の人手不足が改善されなければ
不満が噴出する可能性がある。