米通商代表部(USTR)は21日、日米貿易交渉に関する交渉目的の概要を公表した。モノの貿易に関する関税の撤廃・削減や規制緩和のほか、日本が通貨安誘導を行わないよう求める方針を明記。投資やサービス分野の交渉も段階的に進め、包括的な自由貿易協定(FTA)を目指す姿勢を示した。来年1月下旬から交渉が可能になる。

交渉目的は、工業品や農産品の関税のほか、通信や金融サービス、電子商取引ルール、知的財産権の保護など22項目を列挙。米国が離脱した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と同レベルの包括的な内容を網羅した。

USTRは交渉目的で、年間約7兆円の対日貿易赤字が「関税や、規制などの非関税障壁により引き起こされている」と指摘。貿易赤字削減に向け、自動車や農産品などの重要分野で「より公平でバランスの取れた貿易を実現する」とした。

為替の項目では、日本が対米輸出を有利にするために自国通貨を切り下げる為替操作の防止を明記。為替問題については、両国財務相間で協議すると合意しているが、日米の貿易協定に「為替条項」が盛り込まれた場合、為替介入や金融政策運営をけん制する材料に使われる懸念がある。

自動車貿易を巡っては、米国での生産拡大に向け「追加の規定」を求めるとした。米国は北米自由貿易協定(NAFTA)改定合意で、米国が関税ゼロで輸入する自動車・同部品を一定水準に抑える「数量制限」を導入、日本にも同様の規定を要求するとみられる。

また日本が「非市場経済国」と貿易協定を結ぶ場合、米国に情報提供を求める仕組みを導入するとした。中国が念頭にあり、中国を含むアジア16カ国で構成する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉に影響を与える可能性がある。

日米両政府は9月の首脳会談で、2国間貿易交渉の開始で合意した。米国の貿易関連法は、米政府が貿易交渉を開始する30日前に交渉目的を公表するよう定めている。

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