保険過小給付2000万人 総額537億円 勤労統計問題
毎日新聞2019年1月11日 12時06分(最終更新 1月11日 12時07分)
https://mainichi.jp/articles/20190111/k00/00m/040/088000c

 厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」の一部調査で本来と異なる不適切な手法が取られていた問題で、この統計を基に算出する雇用保険と労災保険などの過少給付の対象は、不適切な調査が始まったとされる2004年からの15年間で延べ約2000万人に上る見通しであることが判明した。同省関係者が明らかにした。過少給付の総額は約537億円に上ると試算している。根本匠厚労相は11日午後の閣議後記者会見で謝罪し、問題が発覚した経緯や今後の対応策などを説明する。【神足俊輔、最上和喜】

 同省関係者によると、過少給付額は失業給付などの雇用保険で約280億円(延べ約1900万人)、休業補償などの労災保険で約241億5000万円(同72万人)、船員保険で約16億円(同約1万人)――と試算した。失業給付の不足額は1人当たり平均約1400円になるという。
 同省は不適切な調査が始まった04年にさかのぼり、不足額を支払う方針。本来のルールに基づかない調査が長年続いたため、連絡先が分からない対象者が多数になる可能性もある。住所データが残っている対象者には手紙を送り、転居した人には同省のホームページなどで差額の支払いを知らせる。
 また、今回の不適切調査は昨年12月、総務省の統計委員会の西村清彦委員長から統計の不自然さを指摘され発覚したという。
 問題を受け、政府は19年度予算案を組み替える方針だ。過少給付の支払いに対応するため、一般会計総額を増やす必要が生じるためで、来週後半にも組み替えた予算案を閣議決定する。
 同統計は賃金や労働時間、雇用の動向を示す労働統計で、国の基幹統計の一つ。同省が都道府県を通じ、全国約3万3000事業所(従業員5人以上)を対象に実施している。失業給付や休業補償の額は同統計の平均給与額を基に決められている。
 同統計では、従業員500人以上の事業者は全て調査対象になるが、東京都内分は04〜17年は対象の約1400のうち500程度しか調査していなかった。比較的給与水準が高い都内の3分の2の大規模事業所が調査から外れていたことで、実態より低い結果になっていたとみられる。
 同省は正規の手法に近づけるため、昨年1月分からデータの補正をしていたが、調査手法の変更を公表していなかったことも判明している。