理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 細胞システム制御学研究ユニットの大野(城村) 雅恵 研究員と谷口 雄一 ユニットリーダーらの研究チーム※1)は、ゲノム注1)DNA(以下ゲノム)の全領域にわたる3次元構造を、その最小構成単位である「ヌクレオソーム注2)」レベルの分解能で決定することに成功しました。

本研究成果は、細胞内の遺伝子の制御状態を分子レベルで理解し、人為的に制御するための基盤になるものであり、遺伝子制御に関わる新しいドラッグデザインや、iPS細胞注3)や培養臓器の効率的な作製など、医学・生物学の幅広い研究に貢献することが期待できます。

近年、生体内における遺伝子制御が適切に行われているかを診断するために、ゲノム全領域の3次元構造を調べる技術の開発が全世界的に進められています。しかし、従来の方法では、それぞれの遺伝子がどのような構造的特徴を持つのか、詳細に調べられるだけの分解能はありませんでした。

今回、研究チームは、単一ヌクレオソームレベルの分解能で、ゲノムの3次元構造を決定する手法を開発しました。酵母ゲノムの解析を行った結果、ゲノムに結合する各種タンパク質因子や化学修飾に応じたヌクレオソームの配置構造の変化を捉えることに成功しました。さらに、4つの隣り合ったヌクレオソーム同士が単位構造を形成しており、開構造と閉構造の2種類を切り替えることで、ゲノムの反応性が制御されることが分かりました。

本研究は、米国の科学雑誌「Cell」(2019年1月24日号)の掲載に先立ち、オンライン版(1月17日付け:日本時間1月18日)に掲載されます。また、本研究成果を基に制作されたイラストが、同号の表紙を飾ります。

<背景>

細胞内のゲノムDNA(以下ゲノム)には、生命を構成するために必要なさまざまなタンパク質のコード情報(遺伝子)が書き込まれています。このゲノムは、ヒストンと呼ばれるタンパク質に1周半ずつ巻き付き、それらが多数つながる形で、細胞内に格納されています。この巻き付いた構造は「ヌクレオソーム」と呼ばれており、ゲノム構造の最小単位となっています。

生体内では、ゲノム上のさまざまな遺伝子のスイッチのオンとオフが切り替わることで、生理状態の調節が行われます。ゲノムは、さまざまな構造状態を取ることで、遺伝子発現のスイッチを調節し、細胞の機能(分化・恒常性の維持など)を制御していると考えられています。例えば、密な凝集構造を取る領域では遺伝子の発現が抑えられることや、異なるゲノム領域が集合した領域では複数の遺伝子が同時に制御されることなどが知られています。

こうした理由から、近年、細胞がどのような制御状態にあるかを探るための手法として、ゲノムの3次元構造を解析する技術が注目を集めています。しかし、従来の方法では、それぞれの遺伝子がどのような構造的特徴を持つのか、詳細に調べられるだけの分解能はありませんでした。そこで、研究チームは、ゲノムの3次元構造の解析を世界最高の分解能で行うための技術開発を試みました。

以下ソース先で

平成31年1月18日
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20190118-2/index.html