1月中旬、衝撃が走った。日本電産が今期の業績予想を下方修正したからだ。
日本電産の2019年3月期は、従来見通しの増収増益予想から一転、減収減益となる見込みだ。
たかが一企業の下方修正ではない。
“優等生”である同社の減収減益は電機業界全体の失速感を象徴する。
ちなみに同社の減収は10年3月期以来9年ぶりとなる。

日本電産は毎年M&A(合併・買収)を実施している。18年にも多くの買収があり、今期は期初に米国家電大手のワールプール(Whirlpool Corporation)から
ブラジルの大手冷蔵庫用コンプレッサメーカー、エンブラコ(Embraco)も買収している。
こうした寄与があるにもかかわらず、今期は減収となるのだ。繰り返すが、これは日本電産固有の問題ではない。
日本の電機業界全体、あるいは日本経済全体の足元の状況である。

誰もが認めるカリスマ経営者である日本電産の永守重信会長は、
業績予想修正の会見において「(18年の)11月、12月には尋常でない変化が起きた」とも「記憶にない落ち込みだった」ともコメントしている。

パナソニックや三菱電機の下方修正にはそれほど驚かない。
むしろ日本電産をはじめ、京セラ、さらにはディスコなどこれまで業界を牽引してきた好業績企業の失速見通しに国内景気の失速を実感する。

●需要の減速は一過性か、継続的か

念のため補足するが、すべての企業が業績予想を下方修正しているわけではない。
19年3月期1〜3四半期を終えた時点で業績予想を上方修正しているところもある。
しかし、その多くは「4〜9月が想定を上回った」というのが理由であることも注視しなくてはならない。昨年終盤から景況感が変わったことは間違いない。

問題はこの需要減速は一過性のものなのか、継続的なものなのか、という点である。
半導体製造装置のメーカーTOWAは、やはり先に業績予想を下方修正しているが、
このなかで、19年3月期第3四半期(18年10〜12月)から悪化した需要は足元の第4四半期(19年1〜3月)にも継続しており、現状は「底が見えない状況」になっているとする。

同業のディスコも「上期は底堅く推移していたものの、下期に入り設備投資意欲の低下が顕著になった」と失速感を示す。
足元で「底を打った」という話はまだなく、やはり底ばい傾向が今なお続いているとみるべきだろう。

●20年、不況のなかでの東京オリンピック

業界では、とりあえず東京オリンピックまで景気は上向くだろうと多くの人が思っていた。これが背景となり、東京オリンピックの前に消費税率を上げてしまおうとなっていた。
しかし、ここにきてそのシナリオが崩れ始めている。

昨秋からの需要減速の大きな要因である米中貿易摩擦については、これから改善される可能性もゼロではない。
トランプ大統領には焦りがみえる。一気に米中貿易摩擦が回避され、中国需要が回復する可能性もある。

しかし、そもそも中国での経済失速にはかねて懸念があり、いつかはバブルが弾けるという見方は根強い。
そういう意味では、中国での景気減速が一時的なもので、今後は回復するという予測より、今回の米中貿易摩擦を契機に一段と失速する可能性のほうが高い。そうなると底は一段と深くなる。

ともかく国内景気は大きな転換点を迎えており、それゆえの日本電産の9年ぶりの減収である。日本電産がくしゃみをする環境であれば、国内多くの電機業界各社は風邪をひいているのかもしれない。
多くの企業が風邪をひくと、中小企業のなかには死活問題に陥るところもあるだろう。

リーマンショック以来の不況は、もうそこまで来ているのかもしれない。
しかし、今年秋にはそれでも消費増税は実施されるだろう。今回はもう延期できないだろう。そうなると、景気の失速を決定的にする可能性がある。

東京オリンピック後の不況がこれまで懸念されていたが、東京オリンピックそのものが大不況のなかで開催される可能性が出てきた。

https://biz-journal.jp/2019/02/post_26708.html
2019.02.15