2019年2月20日 14時44分
去年、山口県周防大島町のほぼ全域が1か月余り断水した原因となったドイツの貨物船の衝突事故をめぐり、広島地方裁判所は法律に基づいて賠償額の上限を24億円余りと決定しました。しかし、山口県などは実際の損害額はこの上限を大きく上回るとしていて、今後、どのように補償が進められるのかが課題となっています。

周防大島町では去年10月、本州側とを結ぶ橋にドイツの海運会社の貨物船が衝突して送水管などが破断し、1か月余りにわたってほぼ全域で断水が続きました。

船舶の事故では、損害額が巨額になるため、法律に基づいて船の大きさに応じて賠償額の上限を定めることになっています。海運会社の弁護士などによりますと、広島地方裁判所は海運会社からの申し立てを受け、今月15日、手続き開始の決定をし、賠償額の上限を24億5000万円余りと決めたということです。

しかし、山口県などは、橋や送水管の復旧だけでも損害額は30億円に上るとしていて、地元の住民や企業が受けた被害を加えると損害額はさらに大きくなる見通しです。

山口県は「裁判所からの正式な文書が届いておらず、確認したうえで今後の対応を弁護士と相談したい」とコメントしています。

周防大島町長「誠意を示してほしい」
山口県周防大島町の椎木巧町長は「弁護士からは、法律で賠償額の上限が決まっていて、覆すのは難しいと聞いているが、損害のすべてについて補償してもらいたい。海運会社は、法的な補償とは別に、被害を受けた町民に対して見舞い金を支給するなどの誠意を示してほしい」と話していました。
町民からは不安の声
山口県周防大島町の町民からは不安の声が聞かれました。

60代の女性は「賠償額の上限が決まったというニュースを見て、被害を受けても全額が補償されないんだなと思った。どれだけ割り当てられるのか気になるし、不安だ」と話していました。

50代の女性は「断水している間、みんなギリギリの精神状態だったので、心理的な負担も考えて海運会社には対応してもらいたい」と話していました。

60代の男性は「損害を請求しても、町民のもとにまで賠償が行き渡らないのではと諦めている」と話していました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190220/k10011821301000.html