https://www.jiji.com/jc/article?k=2019031600160&;g=pol

「空飛ぶ官邸」とも呼ばれる政府専用機が3月、平成の終わりと共に退役を迎える。
1993(平成5)年から任務を開始し、首相や皇族を乗せて世界中を飛んだ。
時に歴史的な瞬間を迎える舞台へと要人を運ぶ重責を担ったのは、パイロットから客室乗務員、
整備員まで、すべて航空自衛隊員だ。常に心掛けたのは安全な航行に加え、日本が世界に誇る「正確さ」だった。
 
明瀬時定3等空佐(44)は、着陸などの時間を管理するナビゲーターを務めた。民間の旅客機にはいない役割で、
「分単位で動く総理の予定は変えられない」と重要性を語る。早く到着しそうな場合は、高度を変えてわざと向かい風を受けることもあるという。
 
パイロットは民間旅客機では決して行わない連続離着陸(タッチアンドゴー)の訓練もする。発着時の振動を軽減させる技量を磨くためで、
高い技術は海外からも評価されている。パイロットを務めていた滝島真之3佐(40)は「『なぜ、日本の政府専用機はあれほどきれいに
着陸できるのか』と聞かれた」と胸を張る。
 
客室乗務員に当たるロードマスターを9年間務めた女性空曹長は「民間と違い、スタッフは常に同じメンバーなので、
あうんの呼吸が通じる」と話す。「乗客」の状況を観察し、あえて何もサービスをしないことがあるという。
「VIPにとって休める時間は移動だけのこともある」と語る。
 
政府専用機は2機あり、1機は不測の事態に備え予備機として同行する。2002、04年の小泉純一郎首相(当時)の訪朝時にも使用。
拉致被害者家族5人は予備機で帰国した。
 
要人以外が乗ることもある。16年にバングラデシュの首都ダッカで発生したテロ事件では、犠牲になった7人の邦人の遺体を帰国させた。
同乗した山下健3佐(44)は「個人的な感情を出さないよう、冷静になるように努めた」と振り返った。
 
退役する初代の後任として、ボーイング社の777−300ER型機をベースとする2代目の政府専用機が4月から運用を開始。
引き続き空自が管理・運航を担当する。


小泉純一郎首相(当時)を乗せ帰国した政府専用機。ドイツのシュレーダー首相(同)も同乗したため、
両国の国旗が掲げられた=2002年6月、東京・羽田空港
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