【クライストチャーチ福岡静哉】地鳴りのような銃声が響き、緑のじゅうたんは血で真っ赤に染まった――。2カ所のモスクで起きた銃乱射テロ事件の現場に居合わせた2人が17日、毎日新聞の取材に惨劇の様子を語った。2人とも移民で、「移民に寛容なはずのニュージーランド(NZ)でなぜ、こんな事件が起きたのか」と声を詰まらせた。

 ミルワイス・ワジリさん(38)はアフガニスタンからの難民として2002年、NZに来た。最初のテロ現場となったヌール・モスクでは事件発生時の15日午後1時45分ごろ、200人以上が礼拝中だったという。「私は男性用礼拝室の中央付近で祈りをささげていた。すると、外で地鳴りのような銃声が響き始めた」。玄関の方を見ると、ヘルメットのようなものをかぶり、手に雑誌と大きな銃を手にした男が立っていた。

 「ギャー!」。撃たれた人が次々と床に倒れた。銃撃は女性や子供に対しても容赦なかった。ワジリさんは北側の裏口に向かった。逃げる人であふれ、素早くは動けなかった。「弾が頭の上をかすめ、周囲の人がたくさん撃たれた。銃弾の雨の中を、とにかく逃げた」。ワジリさんは恐怖に顔をゆがめた。「NZ人は皆、親切でやさしく、私も3人の子供を育てながら幸せな生活を送ってこられた。このような悲劇が起きて、本当にやりきれない」

 容疑者が次に狙ったのは東に約5キロ離れたリンウッド・モスク。そこにいたモハメド・ハサンさん(24)は5年前、アフリカのソマリアからNZに移り住み、トラック運転手の仕事に就いた。モスクには100人ほどが集まっていた。

 礼拝が始まって間もなく、外から悲鳴が聞こえた。大きな銃を構えた男が玄関から入ってきて、銃を撃ち始めた。「広い礼拝室にいたので隠れる場所がなく、その場に伏せるしかなかった」とハサンさん。男はしばらく銃撃を続けた後、逃走したという。

 ハサンさんは「友人や知人が殺された。犯人には怒りしかない」と肩を落とした。「NZに来て以来、差別を受けたことがない。本当に移民に寛容な国なのに、なぜこんなことが起きたのか」。ショックから立ち直れない様子だった。

 50人の犠牲者には多くの移民らが含まれていた。インドネシアやバングラデシュ、パレスチナ自治区、シリア、パキスタン出身者らもいたようだ。被害者らが治療を受けているクライストチャーチ病院では、17日も大勢の親族や友人らが訪れ、身内を亡くした人の泣き声が響いた。

 バングラデシュ出身のアシフ・アシュマドさん(42)は、友人の女性(28)が重体で集中治療室で手当てを受けているという。「何とか助かってほしい。犯人のことは決して許さない」と憤っていた。

 病院にはNZ各地から大勢の聖職者も被害者家族の精神的ケアのために駆けつけた。北部オークランドから来たインド出身のスリル・ソロデさん(31)は「少しでも力になれればと思い、ここに来ました。二度とこのようなことが起きてほしくない」と願っていた。

3/18(月) 2:19
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190317-00000049-mai-asia
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