北方領土をめぐる安倍政権の対応のちぐはぐさが際立っている。2020年度から使われる小学校5、6年の社会の教科書全てが北方領土について日本の「固有の領土」と明記。しかし、こうした記述を主導してきた安倍政権は国会答弁などで「固有の領土」との表現を避け続けている。

 文部科学省が26日発表した教科書の検定結果によると、北方領土を「固有の領土」としたのは申請のあった6点全て。このうち3点がこの表現を初めて使った。17年告示の新学習指導要領が「竹島や北方領土、尖閣諸島がわが国の固有の領土であることに触れること」と求めているためだ。

 特に、東京書籍と日本文教出版の計2点は、申請段階で「北方領土の返還問題が残されています」などと記述。いずれも検定で「児童が誤解するおそれのある表現だ」との意見が付き、「日本固有の領土である北方領土の返還問題が残されています」などと修正に応じた。

 にもかかわらず、安倍政権は北方領土をめぐる日ロ交渉への影響を懸念し、昨秋ごろから「固有の領土」との表現を封印。27日の参院予算委員会で野党は「あまりに弱腰だ。固有の領土と言ってほしい」と迫ったが、河野太郎外相は「波静かな中で交渉を行わせてほしい」と応じなかった。
 こうした姿勢には「政府は児童を混乱させている」と批判の声が出ている。国民民主党の玉木雄一郎代表は27日の記者会見で「教科書に書いているなら、固有の領土と言うべきだ。今のままでは、領土は1島も返ってこない」と切り捨てた。

2019年03月28日07時11分
時事通信
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