「この計画は、失敗だ。」

この想いは、現場の技術者達が、皆考えたことだった。
「だってだぜ。この計画はおどろくなかれコンピュータはこれ以上進歩しない,という前提に立ってたのだ。
とまれ,Σ計画の眼目は「ソフトウェアの部品化とその集中管理」にあった。
全国の「Σ・ワークステーション」で作られたソフトの部品を通産省内に構築する予定だった巨大なサーバで一元管理,供給する。
昨日高校を出たばかりの青少年でもその部品を電子ブロックみたいに組み合わせてプログラムが作れます,
プログラマーは「工員」みたいなもんになります,ほおらソフトウェア技術者は足りなくなりませんよ,とこういうわけだったんだ。」
「この計画ではそういう「部品」としてのソフトウェアは通産省のホストに自然に集まるみたいな話だった。
どこのバカが自分の作ったソフトウェアを,それを部品として使う将来の商売敵のために無償で提供するのだ? 
通産官僚は出世する,ハード屋はシグマ・ワークステーションを作って売る,汝プログラマー飢えて死ね,
あとで部品の組み立て工として安い賃金で雇ってやる,という計画だったのである。」