4/9(火) 6:00配信
「波平さん」理論で高齢化問題は雲散霧消ー日銀調統局長が描く対処法

(ブルームバーグ): 国民的人気の長寿アニメ「サザエさん」に登場する父親の磯野波平さん。日本銀行の関根敏隆調査統計局長は、波平さんと比べると今の日本人ははるかに若くなっていると指摘し、社会保障制度などを適応させていくことが高齢化問題の処方せんにつながると提唱する。

戦後間もない1946年に原作漫画の新聞連載が始まって以来、波平さんは54歳のまま。日銀のチーフエコノミストである関根局長(55)はインタビューで、「年齢には実年齢と生物学年齢の二つの概念がある」とし、自身より1つ年下の波平さんを引き合いに出し、「日本人は生物学的に当時よりずっと若くなっている」と主張する。

生物学年齢を測る最も単純な指標は死亡率(人口100人に占めるその年の死亡者の割合)で、利用可能な1947年の統計では54歳の死亡率は1.7%。2016年で同じ死亡率なのは74歳で、「1947年の波平さんと生物学年齢は同じだ」と言う。同様に大阪万博が開かれた70年の65歳と、2016年の77歳の生物学年齢は同一(死亡率2.3%)だ。

老年学者の調査では、17年の70−74歳の平均的な歩く速度は10年前の5歳若い年齢層と一緒で、16年の75−79歳の平均的な歯の数は11年前の10歳若い年齢層と同じ。運動や食生活の改善など健康的な生活に対する意識の高まりや医療の進歩により、日本の高齢者は若返っている。

生産年齢人口(15歳から64歳)100人で何人の高齢者(65歳以上)を支えているかを示す老年人口指数は、55年の10%から2015年に45%に上昇したが、1970年の65歳を基準とした生物学年齢でみるとほぼ横ばいで推移している。生物学的にみれば、生産年齢人口と高齢者の定義は「実年齢より生物学年齢を用いる方が理にかなっている」と関根局長は語る。

その上で、年金支給開始や退職の年齢など、実年齢にひも付けているさまざまな制度は「現実に起きている変化に適応していない可能性もある」と指摘。退職年齢が実年齢ではなく、生物学年齢に応じて設定されれば「社会保障制度の持続可能性の問題は雲散霧消する」と語る。理論的には、平均寿命の上昇に対する最適な解は「人生における働く期間をそれに応じて増やすことに他ならない」と言う。

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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190409-57200001-bloom_st-bus_all