平成の「顔」として一大ブームとなった「人面魚」。火付け役となった山形県鶴岡市の寺の池で、今も悠々と泳いでいる=写真。当時は通常の百倍もの観光客が訪れ、土産物店の商品も飛ぶように売れた。今はその面影はなく、寺は静寂に包まれている。

 約千百年前から続く古刹(こさつ)、善宝寺。本堂の裏手の山に囲まれた貝喰の池は一九九〇年六月に突如、日本中の注目を集めるようになった。人間の顔の模様をしたコイ、人面魚がすむ。週刊誌が取り上げると、一目見ようと観光客が殺到し、休日には一万人以上が訪れることも。池に落ちる人が出たり、客が餌をやりすぎてコイが太ったりしたという。

 寺の近くの土産屋「ほんま商店」は当時、店主の本間幸雄さん(74)が発案した人面魚のオリジナルグッズ約三十種類を販売。パッケージに人面魚をあしらったまんじゅうは中身は従来品のままなのに、飛ぶように売れた。

 寺には水をつかさどる竜神信仰があり、海上の安全や大漁祈願もする。寺の広報篠崎英治さん(38)は「平成は水害が多かった時代。竜の使いである人面魚たちと災害がなくなるよう祈っていきたい」と話す。

 三月中旬、池のほとりに立つと金色の人面魚が水面に近づき、こちらを見つめた。人面魚は銀や黒なども合わせ計五〜六匹いるという。

2019/04/13 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019041302000297.html
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