圧倒的な人気を誇ってきた米アップルのiPhoneの売れ行きに、今年、急ブレーキがかかった。
中国での販売不振に端を発した「アップル・ショック」。
その影響は世界の市場を揺さぶり、部品を供給している日本の企業にも及んでいる。

iPhoneの精密な部品の一つひとつを供給している巨大なサプライチェーン(供給の鎖)。
その現場をたどると、各国企業がモザイクのように絡み合い、簡単には崩せなくなっている現代の貿易の構図が見えてくる。

春節(旧正月)が過ぎ、街が活気を取り戻す3月上旬、中国の「iPhoneの街」は閑古鳥が鳴いていた。

「世界のiPhoneの半分超を生産する」(中国メディア)といわれる河南省鄭州。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループが超大型工場を構える。
出稼ぎ労働者が増える繁忙期は従業員が40万人を超える。
工場周辺の商店街を訪れると、食堂やスーパーが相次いで閉店に追い込まれ、一部はシャッター通りに。
串焼き店の男性は客がいない店内でぼやく。
「こんな状態が続けば、店がつぶれてしまう」

原因は、昨秋に売り出した新機種に代表されるiPhoneの販売不振だ。
鄭州の工場は5万人規模の労働者を前倒しでリストラしたと報じられた。

中国でiPhoneの販売価格は機種によっては、1万元(約17万円)を超える。
一般的な鴻海の工場労働者からみれば、月給の2倍以上だ。
一方、華為技術(ファーウェイ)などの中国ブランドは数千元で買えるうえ、機能も充実。
中国の消費者にはiPhoneの魅力が下がったと映る。

新年早々、世界の株式市場は「アップル・ショック」に見舞われた。
米アップルは中国でのiPhoneの販売不振などを理由に、業績予想を大幅に下方修正。世界の株価が急落した。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は声明で「中国経済は、米国との貿易摩擦でさらに影響を受けたとみている」として、米中摩擦も一因との見方を示した。

1990年代以降、インターネットなどテクノロジーの進化が進み、先進国の多国籍企業は賃金が安い新興国に製造拠点を移し、世界的な分業体制をつくりあげた。
アップルは、こうした「グローバル・バリューチェーン」と呼ばれる供給網の恩恵を受けた象徴的な存在だ。
世界中に企業の「供給網」が複雑に張り巡らされている時代に、貿易戦争の影響を予測するのは極めて難しい。

4/16(火) 11:31配信
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6320531