※週末の政治

2020年のオープンに向け、建設が進む国立アイヌ民族博物館。アイヌ文化の振興拠点・民族共生象徴空間の中核施設となる=北海道白老町で2019年3月27日、福島英博撮影
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 19日に成立したアイヌ新法では、文化振興の拠点となる「民族共生象徴空間」(北海道白老町、愛称・ウポポイ)の管理や地域振興のための交付金制度が盛り込まれた一方、北海道アイヌ協会が求めてきた個人への生活支援や教育支援は実現しなかった。今後、法の実効性などが課題となる。

 道が実施した2017年の「アイヌ生活実態調査」では、大学進学率は33.3%で、居住地域の平均より12.5ポイント低く、生活保護受給者の割合も地域平均の1.1倍と、経済格差は解消していない。

 また、道が把握するアイヌも06年調査の約2万4000人から昨年は約1万3000人となり、アイヌを名乗り調査に協力する人が4割以上減っている。

 道アイヌ協会は、現在も差別や貧困が解決されていないとして、個人に対する生活支援などを求めてきた。新法の議論が始まったころは、生活・教育支援を目的とした内容も検討されたが、法案では見送られた。

 北海道大アイヌ・先住民研究センターの常本照樹センター長は「現状ではアイヌ個人の特定が難しく、アイヌ個人を対象とする政策を全国的に実施するのは難しい。(新法は)民族共生の理念に基づき、アイヌ民族が地域の人々と共に豊かになることを目指す日本型先住民族政策」と評価する。

 また、土地や資源の回復など具体的な権利についても踏み込まなかった。新法には、資源回復・補償を明記した先住民族の権利に関する国連宣言の趣旨を踏まえるとした付帯決議が付いたが、法的拘束力はない。

 国はアイヌに対し、土地や資源の権利回復、補償を一律に行うのは「国民理解が得られず新たな差別につながる」としている。

 平取町のアイヌで、研究のために発掘された遺骨の返還問題に取り組んできた木村二三夫さん(70)は「奪った権利を回復する。当たり前のことに理解が得られるようにするのは、国の責任と義務ではないのか」と憤る。

 創設された地域振興のための交付金は、市町村が計画を立案する。今年度の予算措置として10億円が盛り込まれているが、具体的な使い道などは今後の検討で決まる。高橋はるみ知事は「交付金の活用で、各地のアイヌの人たちに寄り添った施策が展開され、アイヌ文化振興と共に地域活性化につながることを大いに期待したい」とコメントした。【山下智恵、真貝恒平】

4/20(土) 8:38配信
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