◆ 「助けてください。お願いします」 子どもたちの声響く 登戸殺傷

 通勤や通学の人たちが行き交い、にぎやかながら穏やかな朝が一変した。28日朝、川崎市多摩区登戸(のぼりと)新町でスクールバスを待っていた子どもや大人が相次いで刺された事件。付近は悲鳴が響き、騒然となった。

 「怖かったね」「大丈夫だからね」。現場を通りかかった川崎市の自営業、松村昭人さん(48)によると、ストレッチャーで搬送される子どもたちに、救急隊員は声をかけ続けていた。血の付いたランドセルもあり、カリタス小学校の職員らがスクールバスの中に運び込んでいたという。

 長女がカリタス小に通っているという女性(42)は「近くの交差点で信号待ちをしていたら、別の児童の母親が『逃げて』と叫びながら走ってきた」と話す。この女性によると、子どもたちは登戸駅で待機し、いったん学校に向かったという。女性は「(容疑者とみられる男は)何でこんなことをしたのか」と動揺を隠せない様子だった。

 付近住民らによると、事件が起きた直後、現場付近では、子どもたちの「ギャー」という悲鳴が上がり、近くのコンビニエンスストアの前あたりで2、3人が倒れ、駆けつけた消防隊員が心臓マッサージなどをしていた。歩道に座り込んでぼうぜんとした様子の子どもや泣き出す子どもたちもいた。斎藤隆司さん(67)は「コンビニから血の付いたスカートをはいた女の子が大人に付き添われて出てくるのを見た。あまりに恐ろしい出来事で足が震えた」と振り返った。アルバイト、小林裕重さん(52)は自宅にいたところ「助けてください。お願いします」という子どもたちの声を聞いた。現場には血を拭き取ったとみられるタオルが固まっておいてあり、4、5人で集まった子どもたちの手を大人たちが握り、背中をさすっていた。近くのクリニックの医師も被害者のマッサージに加わっていたという。小林さんは「子どもたちの声が耳から離れない。心に傷が残らないか心配だ」と話した。

 容疑者の男は自分自身も刃物で切ったとみられる。「男が両手に新品の刺し身包丁のような刃物を持ち、スクールバスを待っていた小学生の列に切り込んでいた。それから男は自分で刺して倒れた」。スクールバスの運転手はそう近所の住民に話したという。現場近くで畳店を営む男性(70)は「容疑者らしき人物はバス停付近で血を流し倒れていた」と話した。

 事件を受け、カリタス小には子どもたちを迎えに来た保護者が次々と駆けつけた。【土江洋範、金寿英、斎藤文太郎、志村一也】

毎日新聞 2019/5/28(火) 11:16
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