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札幌市豊平区の不動産仲介店「アパマンショップ平岸駅前店」で起きた爆発事故は16日で、発生から半年を迎える。
爆発の影響で傾斜した向かいのビルでは、アパマン側は修復を前提にビル所有者と賠償交渉を進めているが、
ビル所有者はテナントに立ち退きを迫っており、営業を再開したテナントは困惑している。
被害を受けた周辺のマンションなどでは修復工事が始まっているが、一部の住民たちは今も仮住まいを強いられている。

■取り壊しか修復か

問題のビルは、事故があった平岸駅前店跡地の向かいの雑居ビル「キャデラック会館」と、同会館に隣接するビル
「平岸3条マンション」の計2棟で、不動産仲介業者「ビッグ」(札幌市中央区)が所有し、居酒屋、美容室など計8店舗が入居している。

ビル関係者によると、ビッグは4月中旬、各テナントに対し、「建物各所に傾斜が確認され、建物として危険な状態」として、
2棟の取り壊しを前提に、賃貸借契約を解除する通知を送付した。

一方、平岸駅前店の運営会社「アパマンショップリーシング北海道」(札幌市北区)は5月末、各テナントに対し、
「ビルを取り壊さずに修復を可能とする工法がある」として、修復を前提とした損害賠償金を支払う意向をビッグ側に示していることを文書で伝えた。

3月中旬に営業を再開した平岸3条マンション1階に入居する飲食店の役員は「再開して経営も軌道に乗ってきたのに
7月末までに退去しろと通告された。事故から半年たっても進むどころか後退だ」と話した。

■続く仮住まい

平岸駅前店の裏側にある15階建てマンションでは、3月から修復工事が始まったが、低層階の多くの世帯は現在も仮住まい生活を続けている。
同マンションは事故の爆風で、窓ガラスが割れるなどし、入居する約40世帯の多くに被害が出た。低層階に住んでいた30歳代の女性会社員は、
「半年も自宅に戻れないとは思わなかった」とため息を漏らす。

女性の部屋は、平岸駅前店側に面しており、爆風で茶の間や寝室など室内全ての窓ガラスが割れたほか、排気口カバーや壁紙なども破損した。
事故後、アパマン側から、「早く元の生活に戻れるよう努力する」との説明を受けたが、室内には、細かなガラス片がリビングや寝室に散乱し、
今も戻れる状況ではない。

現在は、アパマン側から紹介された現場近くのマンションで仮住まい生活を送っている。ただ、仮住まい生活中に購入した物は補償対象外のため、
家具は購入できず、衣類などは自宅に置いたままにして必要に応じて、取りに行っている。

自宅に戻れるのは早くても7月以降。女性は、「とにかく不便で無駄な時間だけが過ぎていく。一日でも早く元の生活に戻りたい」と訴えている。

     ◇

爆発は昨年12月16日に発生。店長らが消臭スプレー缶約120本を一気に噴射させたことが原因で、店長や隣接する居酒屋の客ら計52人が
重軽傷を負い、周辺の建物や車両のガラスが割れるなどの被害が出た。

アパマンショップを展開する「APAMAN(アパマン)」(東京)は4月、爆発事故による近隣の建物、車両被害について、約200の法人と個人から
被害申請があり、約190の法人と個人に対し、補償金の全額または一部の支払いが済んだと公表している。

道警は、店長らについて、重過失致傷容疑などの適用を視野に捜査を進めている。