フランスのロケット企業「アリアンスペース」は2019年7月11日(日本時間)、小型固体ロケット「ヴェガ(Vega)」の打ち上げに失敗した。搭載していたアラブ首長国連邦(UAE)の地球観測衛星も喪失した。

ヴェガの打ち上げは今回が15機目で、失敗は初めて。高い信頼性で市場からの評価も高く、改良型となる後継機の開発も進んでいるだけに、今後大きな影響が出る可能性もある。
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アリアンスペースアラブ首長国連邦の地球観測衛星を載せたヴェガ・ロケットの打ち上げ。この約2分後に異常が起き、打ち上げは失敗した (C) Arianespace
ヴェガは日本時間7月11日10時53分(現地時間10日22時53分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのヴェガ射場(ZLV)から離昇した。

ロケットの1段目の燃焼は正常だったが、離昇から約2分後、第1段と第2段の分離や第2段モーターの点火が行われる前後でなんらかの異常が発生し、速度が上がらなくなり、飛行コースを逸脱し始めた。軌道に乗れなかったロケットは、搭載していたUAEの地球観測衛星「ファルコンアイ1(FalconEye1)」とともに、大西洋に墜落した。

その後、ロケットを運用するアリアンスペースは、「打ち上げ失敗」と発表。プレスリリースによると「打ち上げから約2分後、第2段の固体ロケット・モーター『ゼフィーロ23(Zefiro 23)』に点火した直後に、なんらかの異常が発生した」としている。

ただ、打ち上げの中継映像からは、2段目モーターが点火したようには見えず、1段目にもおかしな点がみられるなど疑問点が多く、今後の詳しい調査や発表が待たれる。

12日未明には、欧州宇宙機関(ESA)とアリアンスペースが、この事故に関する独立調査委員会を立ち上げることを発表。失敗の原因を分析するとともに、打ち上げ再開に向けて必要な処置を定めるとしている。

なお、7月下旬には、アリアンスペースが運用する別の大型ロケット「アリアン5」の打ち上げも予定されているが、今回の事故による影響はなく、打ち上げに向けた準備作業を継続するとしている。
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■ヴェガとファルコンアイ1

ヴェガは、アリアンスペースが運用する小型固体ロケットで、同社が運用する大型のアリアン5ロケット、中型の「ソユーズ」ロケットとともに、欧州の政府機関などの衛星打ち上げ需要を支え、さらに欧州内外の民間の衛星も打ち上げるなど、ビジネスでも活躍している。


イタリアにある航空宇宙メーカーのアヴィオ(Avio)がプライム・コントラクターとなり、欧州各国にある航空宇宙メーカーが部品を製造、供給している。運用はフランスに本拠を置くアリアンスペースが行なっている。

ロケットの直径は約3mで、全長は約30m。全4段式で、1〜3段目は固体ロケットで、4段目にのみ、軌道投入精度を上げることを目的に液体ロケットを使用している。高度700kmの太陽同期軌道に約1500kgの打ち上げ能力をもち、主に地球観測衛星や偵察衛星などの打ち上げに活用されている。

ヴェガは2012年に1号機が打ち上げられ、以来14機すべてが成功。15機目となる今回が初めての失敗だった。
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今回のヴェガに搭載されていたファルコンアイ1は、UAEが運用する軍民共用の地球観測衛星(偵察衛星)で、UAE軍のニーズに応えることと、市場に画像を提供することを目的としていた。

エアバス・ディフェンス&スペースが製造主契約者として、タレス・アレニア・スペースが共同契約者として衛星を製造した。開発のベースとなったのは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が運用する高分解能の地球観測衛星「プレアデス(Pleiades)」とされる。

打ち上げ時の質量は約1197kgで、高度611kmの太陽同期軌道に投入される予定だった。

また、このシステムは2機の同型の衛星で構成する予定となっており、今年の末ごろには、同じくヴェガによって、2号機にあたる「ファルコンアイ2」の打ち上げも予定されていた。だが、今回の失敗により、ファルコンアイ2の打ち上げ時期や、システムの完成時期は不透明となった。
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