四コママンガ『フジ三太郎』に見る女性
http://www001.upp.so-net.ne.jp/ketoba/fujisantarou.htm
・男性中心社会を女性の部長や係長の視点から風刺している。
・「主人」を避け、「亭主」「夫」などの呼称を女性の部長に使わせている。
・「妻夫」「淑女服」などの架空の言葉にジェンダー意識を問う姿勢が見られる。
・性別役割分業の固定化に異議申し立てをしている。
・ジェンダーの観点で時代を先取りした作品が注目される。

2 女性の上司
 フジ三太郎の上司に北原部長(女性)がいて、83年ごろからひんぱんに登場する。彼女は配偶者のことを「亭主」(83.7.25)と呼んだり「夫」(83.9.10)
と呼んだりしている。98年度の文化庁による「国語に関する世論調査」で「主人」の呼称が74.6%でもっとも多く使われていて、
「夫」の14.3%を大きく引き離している。この部長の現在の年齢だと考えられる60歳以上の女性では「夫」が6.8%と、
10代ごとの年齢層でもっとも低い数値となっている。言葉の点でこの部長は先進的な女性として描かれているといえよう。

また、現在ではセクシュアル・ハラスメントになりかねない「男の子」呼ばわりもこの部長はしている(83.8.5)。
「ハイ、だれか男の子 コピーとって」「ハーイだれか男の子」と部長が呼びかけるのに対して、三太郎がきょろきょろしながら、
周りに男性がいないので、ぷんぷん怒りながら部長席に行くと、部長は三太郎の前に鏡を差し出す。
脇から若い男性がさっとやってくる。男性社員が女性社員を「女の子」呼ばわりして、コピーとりといった雑用をさせ、若いことを付加価値とすることに対する風刺である。

この部長が 課長(男性)に、「何度お教えしてもおマチガエになるんですネー」と注意する場面(83.10.18)がある。
職階の上下関係では当然の ことであるが、仕事の出来という正当な観点からの叱責である。切れ者の係長(女性)が登場し(83.10.21)、
三太郎がそのの係長にしつけを受けている(83.10.31)。部長が「あきれたわ 食事中に足組むのよ ウチの男たち。くせつけて!」
と係長に指示する(83.11.5)。資料1(85.6.7)では、女性従業員が、性別役割分業意識のもとに、ご飯をよそうよう、女性に頼んでいる。
会社の慰安の宴会といった場面では、地位の上下関係が性差に優先するのであろうか。上司の女性たちの表情からは、
上下関係の論理に基づいて部下がご飯をよそうのが当然だと考えており、部下の男性の表情からは、
固定的な性別役割分業意識に基づいて男性が給仕をすることへの戸惑いを読み取ることができる。

その衝突が双方の目と目の火花に象徴されている。上司と部下の間にある上下の権力関係を、男女を逆転させて描いている。
 このように、会社という組織において、男性中心に事が進んできた状況にあって、女性の地位を正当に認めるタッチが見られる。