毎日新聞 2019年7月26日 22時35分(最終更新 7月27日 12時33分)
この十数年間で大学などの自然科学系の研究者数は増えたものの、主要学会の会員数は大幅に減少し、中には3割以上減っている学会もあることが、科学技術振興機構や毎日新聞の調査で明らかになった。会員が減った学会の割合も調査対象の約7割に達した。「学会離れ」の背景には、国立大学法人への運営費交付金を国が政策的に減らしていることに伴う国立大の人件費削減や、企業のコスト削減などがあるとみられる。

毎日新聞はエネルギー、環境、情報通信、材料、ライフサイエンス・臨床医学の5分野で主要45学会に対し、2004年と18年の個人と法人の会員数を調査した。41学会から回答を得て、両時点の会員数がそろって比較可能な38学会を分析した。機構が同じ45学会の個人・法人の会員数を別の年で比較した報告を参考にした。

 その結果、個人会員は、増加したのが7学会だったのに対し、減少は31学会だった。このうちエネルギー・資源学会、日本環境化学会など7学会は30%以上も減っていた。また法人会員も33学会で減少し、13学会は30%以上の大幅減。増えたのは人工知能学会と日本統計学会だけだった。

 個人会員が増えた7学会中4学会は医学系で、学会への所属や研修の受講が、専門医資格の取得条件になっているためとみられる。

 総務省の統計によると、18年の国内の自然科学系研究者数は約79万2000人で、04年の約71万500人から1割増えた。所属する学会数を減らす研究者や企業が増えている傾向がうかがえる。

 多くの学会が減少の要因の一つに挙げるのが企業の動向だ。個人で13%、法人で50%会員が減った電子情報通信学会の場合、04年時の個人会員の6割ほどを企業の研究者が占めた。「基礎研究に携わる企業の研究者が(製品化に近い)開発部門への異動などで減り、個人会員の減少につながっている」と分析する。

 個人19%、法人32%減の日本農芸化学会も「特に製薬系企業の退会が目立つ。会費や学会参加費を会社が負担しなくなったことが、個人会員の減少の原因にもなっている」と話す。【伊藤奈々恵、酒造唯、須田桃子】

https://mainichi.jp/articles/20190726/k00/00m/040/291000c