ウ ところで,受信契約の締結を強制するに当たり,放送法には,その契約の内
容が定められておらず,一方当事者たる原告が策定する放送受信規約によって定め
られることとなっている点は,問題となり得る。
しかし,受信契約の最も重要な要素である受信料額については,国会が原告の毎
事業年度の収支予算を承認することによって定めるものとされ(放送法70条4
項),また,受信契約の条項はあらかじめ総務大臣(同法制定当時においては電波
監理委員会)の認可を受けなければならないものとされ(同法64条3項。同法制
定当時においては32条3項),総務大臣は,その認可について電波監理審議会に
諮問しなければならないものとされているのであって(同法177条1項2号),
同法は,このようにして定まる受信契約の内容が,同法に定められた原告の目的に
かなうものであることを予定していることは明らかである。同法には,受信契約の
条項についての総務大臣の認可の基準を定めた規定がないとはいえ,前記のとお
り,放送法施行規則23条が,受信契約の条項には,少なくとも,受信契約の締結
方法,受信契約の単位,受信料の徴収方法等の事項を定めるものと規定しており,
原告の策定した放送受信規約に,これらの事項に関する条項が明確に定められ,そ
の内容が前記の受信契約の締結強制の趣旨に照らして適正なものであり,受信設備
設置者間の公平が図られていることが求められる仕組みとなっている。また,上記
以外の事項に関する条項は,適正・公平な受信料徴収のために必要なものに限られ
ると解される。
本訴請求に関する放送受信規約の各条項(前記第1の2(1)キ)は,放送法に定
められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な範囲内のもの
といえる。