内閣は軍を動かせない

ここで注意を要するのが,陸軍の作戦の指揮権は参謀総長が持っており,海軍の場合は軍令部総長が持っているということである. つまり,陸・海軍大臣は作戦に関して口を出せないのである.
また,逆に参謀総長や軍令部総長が政治に口を出すことも好ましいとされていなかった. このような二重構造を持っているということに日本の軍隊の組織的欠陥があったといってよいだろう.

この困難を解消するために東條内閣では,東條首相が陸相・軍需相さらに参謀総長を兼任し,嶋田海相が軍令部総長を兼任するという事態が発生した.
しかし,時既に遅く有効な指導はできなかったのである.

軍は政治に関することを知らないから日本の国力を把握して作戦を立てることはしない. 内閣は軍への指揮権がないから軍の暴走を止められない.
このような事態は統帥権の独立というなかに本質的に含まれていたと考えられる.