【AFP=時事】「ウォンおじいさん」はつえを頭上にかざし、催涙弾の発射をやめるよう機動隊に訴えた──。85歳のウォンさんは、香港民主派デモの最前線でデモ隊を守っているのだ。

 高齢のウォンさんだが、定期的に香港デモの衝突現場に姿を現し、機動隊とデモ隊の間に率先して身を置く。今や日常となった衝突を鎮めたいとの思いからの行動だ。

「若者が殺されるぐらいなら、年寄りが死んだ方がいい」と、繁華街の銅鑼湾(Causeway Bay)で起きた一連の衝突の合間にAFPの取材に答えたウォンさん。頭からガスマスクをぶら下げながら、「私はもう年だが、子どもたちは香港の未来だ」と語った。

 ここ3か月にわたって行われている大規模デモは、時に暴力的な様相も呈してきた。参加するのは若者が圧倒的に多く、一部調査によると、参加者の半数は20〜30代で、77パーセントが大卒だという。

 ウォンさんと仲間の「チャンおじいさん」(73)はデモに参加する高齢者の中でも特に積極的だ。2人が所属しているのは、「守護孩子(Protect the Children)」と呼ばれるグループで、そのメンバーの大部分を高齢者とボランティアが占めている。ほぼ毎週末、警察とデモ隊の間に入り仲裁を試みるが、警察が突撃すると分かれば、デモ隊のために時間稼ぎをすることもある。

■平和的な方法

 銅鑼湾で催涙弾が再び飛び交い始めると、チャンさんはウォンさんの手をぎゅっと握った。「死ぬなら一緒だ」と叫びながら、衝突の最中に戻らないようウォンさんを引き留めたのだ。チェンさんはいつも、ヘルメットの代わりにスローガンが書かれた目を引く赤い帽子をかぶっている。

 守護孩子の主な目的は若者の保護だ。しかしウォンさんらは、デモ隊に対しても警察を挑発しないよう強く求めている。「香港の本質的価値は平和的な方法で守るべきだ」

 一連のデモで、これまでに12歳の子どもから70代の男性まで1100人以上が逮捕されている。多くは暴動の罪に問われており、10年の禁錮刑が科される可能性もあるという。

■「年寄りが面倒を見よう」

 ウォンさんは、抗議活動しかないと意気込む若者らの気持ちを理解できると話す。これまで何十年にもわたって、中国が公然と独裁主義を維持しながら、豊かになり、そして力をつけていく様子を見てきたからだ。

 守護孩子を主催するロイ・チャン(Roy Chan)さんは、高齢の参加者を尊敬しているとしながら、その一方で高齢者たちがこのような場に出てこなければならない現状を残念に思うと述べる。

「人生の最後の数年間は家で快適な生活を送るべきだ」

「だが、彼らは戦いに加わり、若者を守っている」

 ウォンさんは銅鑼湾に現れた翌日、今度は空港近くで行われていた抗議デモの現場に登場した。そして、「ほら、子どもたちは家に帰るんだ」「年寄りに面倒を見させてくれ」と声を上げた。

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