川崎市は今秋、丸子橋(同市中原区)周辺の多摩川河川敷でバーベキューを規制する社会実験に乗り出す。ごみの放置や騒音などに業を煮やした地元住民らと協議を進め、対策を考案。国が管理する河川敷を借り受けて週末を中心にイベントを展開し、誰もが親しめるにぎわいの場として活用することでバーベキュー場としての利用を不可能にする。

 市多摩川施策推進課によると、市が国から借り受けるのは、丸子橋と東急線の鉄橋の間に位置する約2700平方メートルの河川敷。国有地であることから火器使用を禁じた市条例の適用対象外で、春と秋を中心にバーベキューを楽しむ人が集まっていた。

 国有地の隣には市が管理する「丸子橋ピクニック広場」があり、社会実験では一体的に活用する。10月には新たにジャズライブを企画したほか、昨年多摩区で開催し好評だった「プレイグリーンパーク」を開催。体を動かす遊具を設置し、来訪者に自由に遊んでもらうイベントだ。

 イベント開催日以外でも、11月中旬までの期間中、土曜と休日には簡易テーブルや椅子などを備えて休憩スペースとして提供するほか、サイクリングコースの利用者向けの自転車スタンドも設置し、幅広い市民に憩いのひとときを過ごしてもらう予定という。

 多摩川の緑豊かな水辺は、川崎を象徴する風景の一方、増加するバーベキュー客の対策に苦慮してきた経緯がある。

 ごみの大量発生や騒音が問題化したことを受け、市は同市高津区の二子橋付近の河川敷を有料化。2010年9月の社会実験を経て11年4月から約3万4千平方メートルを「多摩川バーベキュー広場」とし、利用時間を制限するとともに1人500円を徴収している。

 約6キロ下流の丸子橋周辺でも、ごみの不法投棄や臭い、騒音といった問題が顕在化していた。「マンションの集積所に捨ててあるのはまだいい方。最近は減ってきたが、路上に放置していく人もいて、目に余る状況だった」とは地元町内会「新丸子東2・3丁目親和会」の尾木孫三郎会長(75)。12年に行政や中原署などを交えた連絡会を立ち上げ、対策を協議してきた。

 有料化も検討されたが、「多くの人たちの楽しみを奪うのはよくない」との声もあり、マナー啓発にとどめるとともに、新たな利活用の在り方を模索してきた。市は社会実験期間中に来訪者や地元住民にアンケートを行い、効果を検証するとしており、尾木さんは「川はみんなの財産。誰もが楽しめるような形になってほしいし、地元としても応援していく」と話している。

神奈川新聞社
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190928-00000014-kana-l14