横浜駅をターミナルにしている相模鉄道(相鉄)は、これまで東京都内へ電車の乗り入れをしていなかった。設立から100年以上の時を経て、2019年11月30日にようやく東京へと乗り入れが実現する。相鉄は西谷駅―羽沢横浜国大駅間を新たに開業させ、それにあわせて、初めて都内に電車を走らせることになった。

 これにより、相鉄は羽沢横浜国大駅からJR線へと乗り入れ、湘南新宿ラインと同じように武蔵小杉駅や大崎駅などを経て、渋谷駅・新宿駅と直結する。

 すでに新ダイヤも発表されており、相鉄からJR線へと乗り入れて新宿駅まで走る電車は1日に92本。ラッシュ時は1時間あたり4本程度が運行される。

 相鉄の電車が東京へと乗り入れることによって、横浜方面からのアクセスが飛躍的に向上する。沿線開発も活発化するだろう。早くも期待が高まっている。

 乗り入れる相鉄も新型車両を用意。事業者や沿線住民・利用者のみならず鉄道ファンからも注目が集まる。

 相鉄の東京への乗り入れはメリットばかりが強調されがちだが、乗り入れることによって弊害も生じる。それが代々木駅の近くにある、青山街道と厩道の2カ所の踏切の開かずの踏切問題だ。

 代々木駅は、山手線と中央・総武線の電車が停車する。どちらの路線も高架化されているので、山手線と中央・総武線の電車によって開かずの踏切が生じることはない。

 しかし、その隣には埼京線や湘南新宿ライン、りんかい線などが走っている。埼京線や湘南新宿ライン、りんかい線が走る線路は、もともと山手貨物線と呼ばれる貨物専用線だった。貨物列車だけが走るなら列車の運転本数は少なく、問題視されることはなかった。

 しかし、1996年に新宿駅発着だった埼京線の運行区間が渋谷駅・恵比寿駅にまで拡大したことで事態は一変する。

 池袋・新宿・渋谷といった副都心を結ぶ埼京線は、通勤の足として埼玉都民に重宝された。旅客列車として運行される埼京線は、貨物列車とは比べものにならないほど運転本数が多い。朝夕のラッシュ時、この踏切は頻繁に遮断されるようになる。こうして、青山街道・厩道の2踏切は、いわゆる開かずの踏切化した。

「こうした事態が起きることは、埼京線の運転区間が拡大する前から予測されていました。渋谷区議会は、開かずの踏切問題を黙認していたわけではありません。埼京線の運行区間が渋谷駅・恵比寿駅まで延伸された1996年、区議会は運輸大臣(当時)に『JR埼京線代々木駅付近踏切に係る要望書』を提出しています。その後、1998年には東京都へも要望書を提出しました。青山街道踏切・厩道踏切の両踏切について、積極的に立体交差化を働きかけていたのです」と話すのは、渋谷区議会調査係の担当者だ。

 要望書は、行政庁に提出するのが通例とされる。そのため、渋谷区議会は手順に則って運輸省や東京都へ要望書を出した。

 渋谷区や区議会の思いとは裏腹に、2001年には湘南新宿ラインが運行を開始する。湘南新宿ラインは埼京線と同じ線路を走るため、青山街道・厩道の両踏切の遮断時間は、さらに長くなった。開かずの踏切は、解消するどころか逆に深刻化してしまう。

 行政庁だけに要望書を出していてもラチが開かないと判断した渋谷区議会は、ついに運行事業者のJR東日本にも要望書を提出。

「青山街道と厩道の両踏切は、地形的な面から歩道橋の設置が難しい状況です。そうしたことも踏まえて、2001年に渋谷区議会はJR東日本に対して、当該区間を地下化するように要望書を提出しました」(同)

 当該区間だけを地下化するという渋谷区の要望は、JR東日本の事情を考慮すれば非現実的ともいえる内容だろう。そうしたこともあって、要望書の効果はなかった。

 それどころか、追い討ちをかけるように2002年には埼京線が大崎駅まで延伸。この延伸によって東京臨海高速鉄道りんかい線も走るようになり、青山街道踏切と厩道踏切を通過する列車はさらに増加した。

 こうして、渋谷区議会は打つ手がなくなる。以降、区議会で青山街道と厩道の踏切問題は議題にあがらなくなった。

 膠着状態になっていた青山街道・厩道の問題は、相鉄の乗り入れを目前にして再燃する。2019年9月に開かれた渋谷区議会の定例会で、改めて開かずの踏切問題が取り上げられることになった。

 以下ソース先で

2019.11.03 07:00  NEWSポストセブン
https://www.news-postseven.com/archives/20191103_1478937.html
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