「道路の大部分が陥没したのに、半年以上たっても復旧しない」。福岡県苅田町の男性から「あなたの特命取材班」に憤りの声が寄せられた。2016年、福岡市のJR博多駅前で大規模に道路が崩れ落ちた事故では、1週間で通行可能になり“奇跡”と世界的ニュースになった。同じ福岡県なのに、なぜ苅田町では復旧が遅れているのか。

【写真】逆側から見た陥没現場。水路にも土のうが積まれており、被害の大きさが分かる
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現場は国道10号から、住宅街へ入る幅3〜4メートルの町道。25メートルにわたり、3分の2以上が崩れ落ち、ブルーシートとガードレールで覆われている。本来なら車がすれ違える幅だが「歩行者道路」として幅約70センチだけが通行できる。

県警などによると、陥没があったのは4月23日夜。現場は水路沿いで深さ最大約1メートル。その後、復旧されることはなく、町は車両向けに迂回(うかい)路を案内してきた。
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近所の男性(62)は「なぜ半年も放置なのか。国道からJR小波瀬西工大前駅への抜け道で人通りも多いのに」。大学生2人組も「工事の見通しくらい知らせてほしい」と注文。自転車の80代女性は「すれ違う時にぶつかりそうで危ない」と不満を漏らす。

苅田町は、自動車関連産業が集積し税収が多く、県内で唯一、国からの交付金を受けない「不交付団体」。財政が行き詰まっているわけではない。
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11月下旬、町施設建設課に問い合わせると「原因の究明と調査、対策強化に時間を要している」との答え。昨年7月にも長さ約6メートルのくぼみが見つかり、2カ月かけ補修工事をしたという。担当者は「今回の陥没は大規模で、隣接する水路にまで被害が出た。慎重に調査中」と説明した。

台風シーズンも関係していた。担当者によると、台風の際にどれぐらい川の水位が上昇し、道路に影響が出るか−などを調べるため、秋まで時間がかかったという。委託したコンサルタント会社による調査も終わり、町は今月10日付で調査結果をホームページ上で公開した。

隣接する水路の底板と道路とを隔てる「堅壁」の接合部分で鉄筋の腐食があり、土圧で壁が水路側にずれて陥没を招いた。町は来夏までに修繕を完了させたい意向で、調査結果を周辺住民にも回覧板などで知らせたという。

九州大大学院法学研究院の嶋田暁文教授(行政学)は「博多駅前の陥没は地下鉄沿線工事という大まかな原因が分かっており、すぐに埋め戻せた。今回は原因不明で調査に時間がかかるのは一定程度は理解できる」とする一方、住民への周知が不十分だった点については「肯定のしようがない。公共工事なので調査状況や修繕の見込みなどの説明責任がある」と話した。(押川知美)

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12/23(月) 13:48
西日本新聞
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