[ 司法の原則 ]
英米法に限らず近代法治国家における司法の原則である
「 なに人も、自分に関係がある事柄について 、裁判官になることができない 」、とする大原則が守られたのかどうか。
「答」:守られませんでした。戦勝国が国際法規には拘束されず自分達に都合の良い ルールを作り敗戦国を裁くという不合理以外に、
その運用においても著しく公平性を逸脱していました。フィリピン代表のハラーニョ判事は、バターンの死の行進の生存者でした 。

通常の裁判であれば、 被害者がその事件の加害者を裁く裁判官 には到底なり得ず、
裁判官としての欠格理由 に該当したため即座に交代させられるべきでしたが、彼は最後まで判事の席に留まりました。

ウエッブ裁判長についてもそれまでは オーストラリアが ニューギニアで開廷した軍事裁判で、
日本人に対する戦争犯罪の訴追の 業務に係わっていました。
つまり検事の職務に従事していたため戦犯裁判に予断と偏見があり、裁判長としては不適格のため本来忌避 されるべき者でした。

[ 判決合議の欠如 ]
驚くべきことに、11 ヶ国の代表判事が全員集まって判決について討議する機会は一度もなかった。
その上判決については 7 人の判事 ( 米、英、中、ソ、ニュージーランド、フィリピン、カナダ ) が内密に判決文を書き、
それを既成事実として他の 4 人 ( フランス、オラ ンダ、オーストラリア、インド )にその結果を渡した のでした。