別府市内の高齢女性方でキャッシュカードをすり替えて盗んだとして、別府署が2018年11月に窃盗の疑いで逮捕した東京都出身の男(44)=窃盗罪などで起訴=が、盗んだカードで現金自動預払機(ATM)から現金を引き出す手口を全国9都県で繰り返していたとみられることが29日、大分地検などへの取材で分かった。特殊詐欺グループの一員とみられ、約2カ月間で計3千万円以上の被害があった。
 男は住所不定、無職斎藤紀彦被告。県警によると、県内で逮捕した特殊詐欺の現金引き出し役(出し子)による被害額が数千万円規模に上るのは珍しい。他にも関与した事件があるとみて、警視庁が20年1月上旬に再逮捕して裏付け捜査を進める方針。
 斎藤被告は18年11月からこれまでに計12回起訴され、大分地裁で公判中。起訴状によると18年9月27日〜同11月9日、大分、福岡、山口、愛知、東京などの各都県で氏名不詳者と共謀。カード55枚を盗み、ATMから3148万円を引き出した―などとされる。大分県内では2件・計400万円の被害があった。公判でいずれも起訴内容を認めている。
 事件の手口は、共犯者が警察官をかたって高齢者方に電話をかけ、「預金口座が悪用されている」などとうそを言ってキャッシュカードと暗証番号を書いた紙を用意するよう指示。金融庁職員を装った被告が訪れ、カードと紙を封筒に入れさせた後、「封印が必要」と印鑑を取りに行かせた隙に別の封筒とすり替えて盗む―というもの。
 封筒は被害者に保管するよう伝えるが、大きさや材質が似ているポイントカードなどを入れているため、封をした状態ではキャッシュカードが中に入ったままと錯覚して盗んだことに気付かれにくい。
 同様の手口による事件は全国的に起きており、警察庁などが注意を呼び掛けている。

<メモ>
 別府署は斎藤被告を2018年11月9日に逮捕した。同10月27日、氏名不詳者らと共謀して別府市内の70代無職女性方に電話し、署員をかたり「詐欺グループを捕まえたが数人、逃げている。あなたの個人情報が漏れる恐れがある」などとうそを言ってキャッシュカード3枚を盗んだ疑いだった。同署によると、不審に思った女性が同署に相談。口座から200万円が引き出されていた。防犯カメラの映像などから斎藤被告が浮上。他にも事件に関与しているとみて捜査した。

2019/12/30 03:01  大分合同新聞
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2019/12/30/JD0058833369