【地方侵略】日本人客にも「まずは英語で話しかける」ニセコ事情 5/25【中国資本の暗躍】

パウダースノーで世界的に有名な北海道のニセコリゾート。オーストラリア人やフランス人に華僑を中心に、今年も世界中から多くのスキーヤー、スノーボーダ―が同地を訪れ、温泉とともにスノーシーズンを満喫した。
地元の倶知安町が、スイスのサンモリッツと姉妹都市の提携を結んでから54年、いまやニセコは「東洋のサンモリッツ」から「世界のニセコ」として、その名を世界のスキーヤーや富裕層に知られる存在となっている。
私事ながらスキーが趣味で、ここ数年、毎年ニセコを訪れているが、その変貌には目を見張るばかりだ。例えば、ニセコ地区にある4つのスキー場の一つ、
東山エリアの中核ホテルである「ヒルトンニセコビレッジ」の館内表記は、日本語よりも英語が先にあり、ホテル従業員も基本、外国人。当然「公用語」は英語である。館内の寿司屋では板前が、私のように、
どこから見ても日本人にしか見えない相手に対してでも、まずは英語で話かけてくる。宿泊客や利用客の大半が外国人なのだから、見かけは日本人でも、ひょっとしたら外国人かもしれないと考えて接するのは合理的だろう。
■物価も「世界の高級リゾート水準」
さらに、ここ数年は、香港やシンガポール、マレーシア、台湾などの華僑を中心とした富裕層や、フィリピン、ベトナム、タイなど、雪が降らない国からの観光客も急増した。
大げさではなくニセコでは日本人を探すのが困難になるほど、外国人で賑わっている。
リッチな外国人客を相手にしているため、物価も世界の高級リゾート相場になっている。ゲレンデ周辺では、ランチの海鮮丼でさえ5000円というのが、ごく標準的な料金だ。
すし盛り合わせになると松竹梅で、それぞれ1万円、2万円、3万円も珍しくない。価格に、5000円、1万円といったキリのいい数字がやたらと多いのは、両替や換算を意識してのことだという。
これだけお金持ちが集まれば当然、地元経済にも恩恵が大きいだろうと思われそうだが、残念ながらそうでもないようだ。まずショップやレストランだが、いまでは客はもちろん、
従業員までも外国人が目立つようになり、日本人の姿がめっきり減っている。私が毎年訪れているレストランでも、昨年までは地元の日本人女性2人が「May I help you?」と慣れない英語で接客のアルバイトをしていたが、
今回は、夏場はロンドンで働き、冬はニセコでスキーを楽しみながらアルバイトしているというフランス人青年と、職を求めて中国本土からやってきた20代女性の2名にとって代わられていた。
これだけ多くの国から観光客がやってくると、接客にも英語だけでなく、フランス語や広東語までが求められる。これでは、普通の日本人が出る幕はないかもしれない。
「99.9%お客さんは外国人。今日もフランス人の団体と、香港やマレーシアからのグループの予約で満席です。彼らが満足する接客は、日本人では難しいですね」と英語でアルバイトに指示を出しながら、日本人の料理長は話していた。
■なぜか地元も国内資本も儲けられていない
流入人口が増えれば、当然地価は上昇する。3月末、国土交通省から発表された公示地価では、地元の倶知安町の住宅地の公示地価は前年比33.3%と3年連続全国トップ。
しかもトップ3をニセコ地区が独占した。さらに、商業地でも35.6%と全国トップとなり、まさにニセコが日本全国を圧倒している。そうなれば、少なくとも不動産開発の分野では、
日本のデベロッパーや金融機関が荒稼ぎしているのだろうと思ったのだが、どうやら、それもないようだとわかって驚いた。
私が調べた限り、ニセコでの海外富裕層向けを中心としたコンドミニアムや別荘への不動産投資ニーズに、国内の不動産業者・銀行は、ほとんど応えられていない。
海外不動産業者やプライベートバンクと海外富裕層との間には、独自のネットワークが形成され、日系企業が入り込む余地がほとんどない状態であるという。