0016名無しさん@1周年
2020/01/01(水) 11:11:28.58ID:jCPj75Rk0京都西本願寺に、飛雲閣 (ひうんかく) という名の
建物があります。三層の楼閣建築で、金閣・銀閣と
並んで、京都三名閣のひとつとされており、国宝の
建築物です。
そんな飛雲閣の大きな特徴は、金閣や銀閣とは
明らかに異なる、非対称でアンバランスな外観です。
唐破風(からはふう)と、千鳥破風(ちどりはふう)で構成された多様な屋根、外壁には
火頭窓(かとうまど)や、軍配形の窓が配されており、2層には三十六歌仙が描かれた
美しい建具も見られ、にぎやかで何とも複雑怪奇な様相です。
そんなユニークで奇抜なデザインに、まとまりが無く稚拙な印象を感じてしまいそうですが、
実際に建物を目の前にすると、全体が絶妙なバランスで保たれている事に、次第に気付か
されます。あまりに自由奔放で、不完全にも思えるはずが、危ういながらも、各部が軽妙に
関係し合っているのか、躍動的な中にも不思議に落ち着きさえ感じます。
西洋の美が均整や完璧、華麗さを求めるのに対して、私たち日本人の持つ美意識の
背景には、不均整や不完全、簡素ものに余情を感じる部分があり、それらは、古くから
「わび」や「さび」、「数寄」、「幽玄」 などの言葉に表現されて来ました。
庭園を例にあげれば、西洋においては秩序ある幾何学的なデザインを用い、シンメトリー
(左右対称)で人工的な美しさを求めるのに対し、日本では自然との調和を基本にしながら、
そこに思想や情景をテーマに庭園をかたちづくります。
重心を意識しながら、不等辺三角形に要素を配置するその手法は、華道や生け花の
アシンメトリー (非対称)の造形と共通するものがあります。
そこでは、あえて均整を破る事により、それぞれの要素がお互いの個性を強調しあったり、
欠点を補う効果が生まれます。また、変化のある造形が、奥行きのある空間の創造をもたら
します。
また、造形の世界に限らず、音楽や古典芸能においても、「余韻」や「間」は、その美しさを、
より引立たせる大切な要素とされています