全国的な知名度がある奈良県のマスコットキャラクター「せんとくん」の人気が再燃している。県が平成30年8月、ライセンス料の無償化に踏み切ったことで、関連グッズが続々と開発されている。誕生当初は奇抜な見た目で「気持ち悪い」などと不評を買ったせんとくんだが、今や古都になくてはならないキャラとして活躍している。(藤木祥平)

 せんとくんは22年に開かれた「平城遷都1300年祭」の公式マスコットとして、20年2月12日に産声を上げた。童子にシカの角が生えたキャラは一部で不評を買い、一時は「まんとくん」などの対抗キャラも現れた。しかし、メディアで何度も取り上げられるうちに知名度が上がり、せんとくんを見るため奈良を訪れる人も出るなど人気者に。23年には観光PRキャラクターとして県職員に“採用”され、荒井正吾知事も「課長級」のお墨付きを与えている。

 ご当地キャラクターのイラストを商業目的で使用する場合、ライセンス料が発生するケースが多い。せんとくんのライセンス料は商品販売予定額の3%に設定され、ピーク時の22年度にはライセンス収入が約4900万円にも上った。

 だが、その後は露出の機会が減り、29年度のライセンス収入は約160万円に。このため県は広く活用を促すのが得策と判断し、30年8月にライセンス料の無償化に踏み切った。

 ご当地キャラクターとして不動の人気を誇る熊本県の「くまモン」は22年の誕生当初から、一定の条件を満たした企業に限って国内でのイラスト無償使用を認めている。同県の担当者は「大企業だけでなく、中小企業にも幅広く使ってもらい、熊本県のPRにつなげたかった」と説明。「ライセンス料を取っていればという指摘もあるが、ここまで人気が広がったのは無償化で利用を推進したことが要因だろう」とみる。

せんとくんのイラスト使用申請件数は、29年度は有償、無償合わせて91件だったが、無償化した30年8月から31年3月末までの8カ月間では136件に急増。今年度は12月17日現在で82件の申請があった。奈良県の担当者は「新規の申請件数は落ち着いているが、イラストの使用は申請から2年間有効なので、一概に減っているとはいえない。むしろ、着実に使用してもらっている感覚だ」と話す。

 奈良には他にもさまざまなマスコットキャラクターがいるが、せんとくんの人気はいまだ根強い。土産物店「絵図屋」を運営する明新社(奈良市)の営業担当者は「せんとくんグッズの売り上げは大きい。ご当地キャラとして認知度がある証拠ではないか」という。

 民間の調査機関「日本リサーチセンター」が令和元年10月、全国の18のご当地キャラクターについて15〜79歳を対象に調査した結果、せんとくんの認知度は昨年度から4ポイント上昇して70%に。首位のくまモン(91%)、千葉県船橋市の非公認キャラクター「ふなっしー」(88%)に次ぐ3位に入った。

 ライセンス料の無償化を受け、グッズの販売を始めた県外の企業もある。パソコン周辺機器開発会社「SAC」(横浜市)は、せんとくんをあしらったスマートフォン用充電器「コンせんとくん」を開発。平成30年11月から販売を始め、現在も順調な売れ行きを見せているという。

 奈良県観光プロモーション課の野田康彦課長補佐は「せんとくんの認知度が向上しているようで喜ばしい。今後も奈良をPRしてもらい、好循環を生んでくれたら」と期待を込めた


せんとくん
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2020.1.2 08:00 産経新聞
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