米中両国は15日、貿易交渉を巡る「第1段階の合意」で正式に文書に署名した。
合意内容は、中国が米製品の輸入を1.5倍に増やすことや、知的財産権の保護など7項目。
米政権は2月に制裁関税の一部を下げる。

ただ、中国は産業政策の抜本見直しを拒んだままで、米国も中国製品の7割弱に制裁関税を課したままだ。
米中対立は「薄氷の休戦」にすぎない。

米中両国はトランプ大統領や中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相が参加してホワイトハウスで署名式を開いた。
トランプ氏は「公正な貿易を実現する歴史的な取引だ」などと成果を誇った。

米通商代表部(USTR)は約90ページの合意文書を公表し、中国による金融サービス市場の開放や人民元安誘導の自制――など7項目の詳細を開示した。
両国が貿易拡大や市場開放などで合意文書にとりまとめるのは、18年7月に関税合戦が勃発して以降で初めてだ。

合意の柱は米中貿易の大幅拡大だ。
中国は米国からモノとサービスの輸入を2年で2000億ドル増やす。

今回明らかになった輸入拡大規模の内訳は、工業品が777億ドル、液化天然ガス(LNG)などエネルギーが524億ドル、農畜産品が320億ドル。
米国のモノ・サービスの対中輸出額は1863億ドル(17年)で供給量は1.5倍となる。

合意文書には知的財産権の保護も盛り込み「中国は企業秘密や商標などで権利保護を強化する」とした。
中国に進出する米企業は、同国側に求められる技術移転を嫌ってきたが、合意文書には「当局による外国企業への技術移転の強要を禁止する」とも明記した。

米国側は「第1段階の合意」を受けて、2月中旬をメドに、19年9月に発動した制裁関税第4弾(1200億ドル分)の関税率を15%から7.5%に引き下げる。
発動済みの制裁関税を緩和するのは初めてで、過熱し続けた貿易戦争がようやく休戦に向かう。

もっとも、今回の文書には、合意内容を履行しているか監視する制度を盛り込み「実行できていなければ適切な対抗措置を執る」とも盛り込んだ。
両国高官は定期協議を月1回開き、USTR代表と中国副首相も定期的に会談する。

米政府高官は「中国が合意内容を守らなければ、制裁関税を再発動する」と明言しており、関税合戦は再発のリスクと隣り合わせた。
中国が合意内容を実現できるかも見通しにくい。

貿易戦争前の米国の対中輸出の内訳は、13%が航空機で、大豆が9%、乗用車が8%と続く。
中国は景気減速で内需が弱含んでおり、供給量を大幅には増やせない。
「管理貿易」で米国産を優先すれば、日本などほかの貿易相手国のシェアを抑える必要も出てくる。

市場開放や規制緩和策も新味には乏しい。
合意文書には金融サービスで「中国が外資規制を緩和する」と明記したが、中国は19年7月に、証券分野や資産運用分野で外資の出資規制を撤廃すると公表している。

争点だった知財問題も、中国はこの1月に技術移転の強要を禁止する新法を施行しており、既存の施策の焼き直しが目立つ。
そのため、米政権は制裁関税第1〜3弾(2500億ドル分)は25%の関税率を堅持し、中国も産業補助金の見直しなど構造改革は拒んだままだ。

トランプ氏は「早期に第2段階の交渉を始める」と主張するが、同氏は「合意は11月の選挙後になるかもしれない」とも話す。
関税合戦そのものの終結は依然として見えてこない。

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