「沖縄の負担軽減」を目的に本土で実施されている二つの日米共同訓練が基地を飛び出し、民間空港の使用へと広がっていることをご存知だろうか。
米海兵隊の垂直離着陸輸送機「オスプレイ」の整備・補給拠点には、隣接して北海道の新千歳空港、九州の熊本空港があり、実際にオスプレイは熊本空港の滑走路を使って離発着している。

これは、安倍晋三首相が重視する米国の対日防衛政策提言書「アーミテージレポート」が日本側に求めた、「日本列島の米軍基地化」を忠実に実行する内容。
その一方で、肝心の「沖縄の負担軽減」の抜本的な解決にはほど遠い状況となっている。

二つの日米共同訓練は、陸上自衛隊と米海兵隊による「フォレストライト」と、北海道限定で行っている「ノーザンヴァイパー」。
日米両政府は2016年9月1日、日米合同委員会で、米海兵隊普天間基地に配備されているオスプレイやヘリコプターの訓練を沖縄県外に移転することで合意した。
「沖縄の負担軽減」が目的であることから、訓練の移転費用は日本政府持ちとなった。

最初の移転訓練は委員会合意から間もない16年9月12日からグアム島で実施され、オスプレイ16機、米兵800人が参加。
移動の燃料費などは日本政府が負担した。

ところが、移転訓練は2回目以降、既存の日米共同訓練である「フォレストライト」(1年度2回)と新設された北海道を舞台にした同訓練の「ノーザンヴァイパー」(同1回)に飲み込まれた。
その結果、実施中を含む訓練移転10回のうち、海外で実施されたのは最初の1回だけ。
残り9回はいずれも日本本土で実施され、沖縄の基地負担が本土に広がる形となった。

「フォレストライト」は1981年から始まっており、訓練にかかる費用は日米両政府がそれぞれ負担していたが、日米合同委員会の合意後、オスプレイなどの往復燃料費や武器、車両などの輸送費は、すべて日本側の負担となった。
後発の「ノーザンヴァイパー」の訓練移転費は最初から「日本持ち」となっており、二つの日米共同訓練を合わせると16年度は3億6800万円、17年度は19億5000万円が日本側から米側に支払われた。

18年度は約23億円、19年度は約28億円、20年度は約31億円と年を追うごとに日本側の負担額は増え、米側にとっては「日本のカネ」で実施できる「安上がりな訓練」となっている。
今年1月に始まった「フォレストライト」「ノーザンヴァイパー」の最大の特徴は、民間空港を利用している点にある。

「フォレストライト」は1月18日から始まり、30日まで熊本県の大矢野演習場、宮崎県の霧島演習場で実施。普天間基地のオスプレイ4機も参加している。
訓練開始に先立つ17日夕、2機編隊を組んだオスプレイ4機が、空港ターミナルに止まった民間航空機を横目に次々と熊本空港の滑走路に着陸した。
着陸後、ローターを上に向けたヘリコプターモードで滑走し、隣接する陸上自衛隊高遊原分屯地へ移動した。

訓練期間を通じて、この高遊原分屯地がオスプレイの補給・整備拠点として使われる。
日米物品役務相互提供協定(ACSA)にもとづき、自衛隊の燃料が提供され、普天間基地からやってきた米兵が機体を整備する。
絵に描いたような「日米一体化」である。

以前の「フォレストライト」は岩国基地、三沢基地などの米軍基地をオスプレイの整備・補給拠点として活用していたが、2018年12月の「フォレストライト」で福岡県の航空自衛隊築城基地を整備・補給拠点としたのを皮切りに、自衛隊基地・駐屯地の利用が始まった。
19年12月の「フォレストライト」は、滋賀県の陸上自衛隊明野駐屯地を整備・補給拠点として利用した。
そして今回、高遊原分屯地を利用することで熊本空港の滑走路を使うことになり、初めて民間空港を訓練に巻き込むことになったのである。

オスプレイの離発着場が「米軍基地⇒自衛隊基地・駐屯地⇒民間空港」へと推移した流れは「ノーザンヴァイパー」でも変わりない。
17年度は米軍三沢基地がオスプレイの補給・整備拠点になったが、米軍は「三沢基地は海に面して霧が多く、使い勝手が悪い」と主張、18年度の「ノーザンヴァイパー」では北海道の陸上自衛隊帯広駐屯地の利用が決定した。
このときは北海道胆振東部地震で訓練そのものが中止となり、今回は1月22日から2月8日まで航空自衛隊千歳基地を整備・補給拠点として活用することになった。

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