2月22日、東京都の老人保健施設勤務の男性職員が新型コロナウイルスに感染したことがわかった。この2日後、厚労省は自治体に「介護施設での感染防止の通達」を出した。ケアマネジャーらを長年取材している相沢光一氏は「介護現場からは『厚労省が具体的な対応策を示してくれない』という不満が出ていた。現場との意識の乖離がある」という――。

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厚労省「あとはヨロシク」と現場に丸投げの無責任

「日本で新型コロナウイルス感染者が増え始めた2月上旬頃から、介護現場で働く人間は強い危機感を持ちました。われわれが日々接しているのは、感染すれば重篤化するといわれている高齢者だからです」

そう語るのはケアマネとして15年のキャリアを持つTさんです。所属する社会福祉法人では介護施設を運営しています。

Tさんは新型ウイルスということもあって、厚生労働省から感染予防の具体的な対応策が示されることを期待していました。ところが一向に具体的な対応策が示されないことに不満をもったといいます。

「2月10日過ぎから事務連絡は来るようにはなったんです。でも、内容はこれまでわれわれがやってきたインフルエンザやノロウイルスへの対応とほぼ同じもの。“対応は経験のあるみなさんの判断に任せる”という姿勢を感じました」

「あとはヨロシク」とでもいうような責任放棄の姿勢や上から目線の物言いに、Tさんら現場の人は首をかしげたと言います。

施設職員が感染すると慌てて対処「何か起こらないとやらないのかよ」

厚労省の姿勢が変化したのは2月22日。東京都の老人保健施設(老健)の職員の感染が判明したことがきっかけだったようです。2日後の24日にはこれまでとは明らかにトーンの異なる「通知」が来ました。

そこには「家族が入所者の面会に来ても発熱の症状がある場合は断る」、「職員は出勤前に体温を測り風邪のような症状があれば休む」、「デイサービスの利用者も発熱があれば利用を断る」などと書かれていました。介護施設ではすでに実施済みのことばかりでしたが、厚労省から具体的な対応策が示されたことに安心したといいます。

「22日の一件があって慌ててつくって出した、という印象も受けました。何か起こらないとやらないのかよ、と」(Tさん)

厚労省職員と現場、危機感の持ち方で大きな隔たり

普段は安全地帯からゆるい指示を出すだけ。危機的状況になって、はじめて対処する。今回、政府の対応の遅れが大きな問題となっていますが、最優先事項のひとつであるはずの介護現場に対しても、「後手後手」だったそうなのです。

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Tさんが憤りを隠さないのは、常に高齢者と間近で接しているからでしょう。厚労省の職員とは危機感の持ち方で大きな隔たりがあるのです。

「介護職の人間はふだんから感染症予防には細心の注意を払うことが身についています。研修も数多く受けていますし、感染症の知識はもとより予防のスキルもあります。また、特別養護老人ホーム(特養)や老健といった介護施設には感染症対策委員会の設置が義務づけられており、毎月スタッフが集まり、対応策を話し合っています」

Tさんが勤める施設では、居室は定期的に消毒し、トイレも入所者用と職員用とに分けています。手指のアルコール消毒はルーティンで、マスクは常時つけています。相当の備蓄があるので、「当分はマスク不足で困ることはないと思います」とのことです。

何か起こらないと動かない厚労省の体質に憤り

今回はクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)での防疫の不備が批判されましたが、「介護施設ではあのようなことはあり得ない」といいます。


2020/02/29 9:00 全文はソース元で
https://president.jp/articles/-/33326